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連載:メタル史 1980年⑧Saxon / Strong Arm of the Law

Saxon、N.W.O.B.H.M.から出てきたバンド(1979~1981頃のUKメタルデビュー組)でIron MaidenDef Leppardに次ぐ知名度を持っているバンドと言ってもいいでしょう。1979年デビューで2024年にはデビュー45周年。一度も活動休止せずコンスタントに新譜をリリースし続けており、2024年にも新譜を出しています。

Saxonは同時代デビュー組のバンドの中では年齢が高く、Judas PriestBlack Sabbathと言った70年代初頭デビュー組と大体年齢が同じ。なので、デビュー当時からちょっとベテラン感というか、兄貴感があるバンドでした。もともと1970年初頭から地元ヨークシャーでSOBとコーストというバンドで別々に活動しており、それらのバンドが1975年に解散したときに両バンドの合体してできたバンド。なので、デビューまでの下積みが長いバンドです。

1980年のSaxon
ルックスからしてもフレッシュな新人と言うより(良くも悪くも)ベテラン感があります
左からビフ・バイフォード(Vo)、スティーブ・ドーソン(Ba)、ピート・ギル(Dr)、グラハム・オリヴァー(Gt)、ポール・クィン(Gt)
出典

長いキャリアの中でメンバー交代もあり、現在までバンドに残っているのはVoのバイフォードとGtのクィンのみ。クィンも2022年にツアーからの引退を宣言し、現在はツアーギタリストとしてDiamond Headの中心人物であるブライアンタトラーが(Diamond Headを続けながら)参加しています。

なお、ポールクィンの髪の毛は時代と共に増減しています。上の写真が1980年。で、こちらが1985年。

1985年ごろ
右端がクィン
…増えた!

いわゆる日本で言うLAメタルは海外だと「Hair Metal」とも呼ばれます。みんな長髪だから。そんな時代を感じますね。なお、髪が増えたのは1985年で、それまでのUKの独立系レーベルからメジャー(EMI~Virgin)に移ったタイミング。やっぱりメジャーだとビジュアルイメージにもいろいろ言われるのでしょうか。しばらく後、1999年にメジャーを離れ、メタル系のレーベル(SPV/Steamhammer)に移るとバンダナスタイルに変化。自然体に戻ります。

00年ごろのSaxon
クィンは右から二番目
自然体になった感じがします

この後は基本的にバンダナスタイルに落ち着きました。

最近のクィン、渋い

壮大に話がそれましたが、1980年時点のSaxonのルックスってかなりインパクトがあったと思います。ただでさえ他のバンドより年上だし、さらに実年齢に比べても(率直に言えば)老けていたし。ポールクィンは1951年生まれなのでこの時29歳。クィンだけでなくドーソンもちょっと来てますが彼もこの時点で28歳ですからね。見た目の貫禄だけなら当時のメタル界1位です。

このアルバムは彼らの3枚目のアルバムに当たり、1980年に2枚アルバム(2nd「Wheels of Steel」と本作)をリリースしています。それは見た目が(どう見ても)ベテランバンドの彼らが早く見た目に合うキャリアを積みたかったのかもしれません。後、2ndは全英5位まで上昇。本作も11位まで上昇しました。同じ1980年リリースのIron Maidenの1stが4位だったのでそれに比べると少し劣りますが、1980年時点ではセールス的にもN.W.O.B.H.M.の旗手だったんですよね。実際、演奏は流石にタイトだし、見た目通りのベテランの風格があります。それだけのビッグバンドになりながら、まだまだルックスが「ありのまま」だったのが1980年という時代ですね。むしろこのルックスだったからこそメタラー達の熱い支持を勝ち得た部分があったのかもしれない。これは公式のアーティスト写真なので、自ら選んでこのビジュアルを打ち出していたんですよね。

なお、この頃からライブではクィンは帽子を被ることが多かった様子(YouTubeで確認できる範囲だとほぼすべて被っている)。隠したいのか出したいのかどっちなんだろう、本人も迷っていたのだろうか。40年以上前のアルバムですが、こういう悩みを(勝手に)想像すると身近に感じます。

本作のプロデューサーはPete Hintonとバンド自身。1980年にリリースされた二枚とも同じプロデューサー、同じスタジオで作られています(録音時期は別々なので、2枚組として作られたわけではない)。前作が音楽的にも商業的にも手ごたえが良かったので勢いが乗っているときに作られたのでしょう。このピート(またはピーター)・ヒントンと言う人はそれほど有名なプロデューサーではありませんが、同じくN.W.O.B.H.M.のWitchfinder Generalや80年代後半からとても良質なスラッシュメタルを生み出したCoronerをプロデュースしたりしています。知らずに選んだけれど、今回の連載で選んだ300枚にはけっこう顔を出してくるプロデューサー。

※はじめて当連載に来ていただいた方は序文からどうぞ。

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1980年から2009年までの30年間のメタル史を時系列で追っていきます。各年10枚のアルバムを選び、計300枚でメタル史を俯瞰することを…

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