Red Fang / Arrows
レッドファングは、2005年に結成されたオレゴン州ポートランド出身のアメリカのロックバンドです。本作が5枚目のアルバム。結成以来メンバーチェンジがなく、ギタリスト兼ボーカリストのブライアンジャイルズ、ベーシスト兼ボーカリストのアーロンビーム、ギタリストのデビッドサリバン、ドラマーのジョンシャーマンの4人構成。過去、Kyuss Live、Orange Goblin、Crowber、Helmetなどとの共演、Mastdon、In Flames、Opethのツアーサポートを行いファンベースを築いてきました。バンドキャンプのリリース文は下記の通り。なかなか面白い文だったので訳しておきます。
RED FANGが待望のニューアルバムArrowsで帰ってきた!4年ぶりのアルバムで、みんなのお気に入りのビールを粉砕し、ゾンビを殺し、エアギターコンテストを審査するメタルヒーローが活動を再開し、彼らが最も得意とすることを実行します。
「このレコードは、(2011年のセカンドアルバム)Murder The Mountainsに一番近いね」とベーシスト/ボーカリストのAaronBeamは言います。「音楽的に同じように聞こえるということではなく、Murder the Mountainsは自分たちのやりたいことを何でもやってみたんだ。今回と同じようにね。」
Arrowsは、バンドの故郷であるオレゴン州ポートランドのHalfling Studiosで、Murder The Mountainsと(2013年の3作目)Whales and LeechesのプロデューサーであるChris Funkと一緒に録音されました。「クリスは、曲の間にある奇妙なアンビエントと、曲内の不気味で偶発的なノイズを使うのがうまいんだ」とギタリストのブライアン・ジャイルズは指摘します。「彼は間違いなく、他のやり方ではできない雰囲気を音楽に追加してくれていると思うよ。」
Arrowsは、バンドにとって新しい領域である適切なタイトルトラックでもあります。「実際にアルバムに収録されている曲にちなんでアルバムに名前を付けるのはこれが初めてなんだ」とBeam氏は説明します。「今までにも、アルバムに含まれていない自分の曲にちなんで名付けられたアルバムはあったんだ。だから今回は”ついにモノにしたぜ”という感じかな。」
同様に、ファンは「Arrows」という曲が部分的に何であるかを理解できないかもしれません。「歌詞のいくつかに混乱しているなら、それは正しいよ」とビームは説明します。「それは瞑想に言及しているんだ。僕は6年前に瞑想を始めたけど、不安があまりないときにしか瞑想できない。だから、僕が瞑想を必要としない時にこそ、僕は瞑想できるってわけ。」
他の場所では、「Fonzi Scheme」は、伝説的なハッピーデイズ(※アメリカのホームコメディドラマ)のクールな男Arthur Fonzarelli(※フォンジーまたはフォンズと呼ばれるキャラクター)にちなんで名付けられました。これは、彼の有名なキャッチフレーズ「Aaay」の鍵になっているからです。プロデューサーのクリス・ファンクは、ポートランド・チェロ・プロジェクトから弦楽器奏者を連れてきて、トラックをランクアップするというアイデアを思いつきました。
一方、「Funeral Coach」のオープニングリフは11年前に書かれました。しかし、この曲が完全なダブル・ミーニングの栄光に花を咲かせる(※曲が完成する)には長い時間がかかりました。「僕は車を運転していて、後ろに”Funeral Coach”と書かれた霊柩車を見たんだ」とビームは説明します。「それで、僕の頭に浮かんだ最初のことは、ヘッドセットとクリップボードを持った男だった。それで、彼の指導によって5分後にはみんなが涙と悲しみを忘れてしまうんだ。」
伝統に敬意を表して、Arrowsはすべてのドラム、ベース、ギター、ボーカルを含むフォーマットで利用できるようにしました。しかし、それは別の方向に進んでいた可能性があります。「僕たちの当初のアイデアは、ボーカルやギターソロなしでアルバムをリリースすることだった」とビームは説明します。「ギターソロが必要な場合は、さらに5ドルかかる。あなたがボーカルが欲しいなら、それは10ドル。だから基本的にみんなは僕らがそれをしなかったことを幸運に感じるだろうね。最初から全部買うことができるんだから。」
RED FANGは、これはファンへの感謝の気持ちを表したものだと考えています。「僕らのアルバムを購入してくれてありがとう、ラッキーな野郎。」
それでは聞いていきましょう。
活動国:US
ジャンル:Stoner Metal/Rock
活動年:2005-現在
リリース日:2021年6月4日
メンバー:
Aaron Beam Bass, Vocals
John Sherman Drums
Maurice Bryan Giles Guitars, Vocals
David Sullivan Guitars, Vocals
総合評価 ★★★★
一曲一曲はけっこう短く、ハードコア的。ハードコア的な曲構造にドゥームなリフと、ストーナー的な煙がかったノイズサウンドが載っている。バンドが燃え盛り、周りがノイズの煙で立ち上り、全体像が煙っていくようなサウンド。けっこう長尺曲で酩酊させそうなサウンド構成なのに、曲構造そのものは短い、アルバムの作りとしても1分台、2分台の曲が入っている。ボーカルスタイルもかなりストロングで、マッチョでハードコア的。ただ、パワーで徹頭徹尾押し切るというよりは、8や11のようにところどころ力を抜いた歌い方も出てくる。5なんかはグルーヴメタル感もあって、大陸的なカラッとした感覚がある。全体として、USっぽさを強く感じる音像。楽曲構造とサウンドスタイルの組み合わせはUSモダンメタル勢の中でも独創的。強く煙がかった音とハードコアな曲調の組み合わせは特徴的に感じた。
余談だけれど、これもRELAPSEレコードからのリリース。先週今週で3枚目。特に意識してRELAPSEを追いかけているわけではないのだけれど。こうしてみると面白いアルバムをたくさん出しているレーベルなんだなぁ。
1.Take It Back 02:00 ★★★
静かで不穏なイントロからベースリフが入ってくる。何かを掘るような。遠くで叫ぶようなボーカルも入ってくる。奇妙なノイズが羽音のように耳元を飛び回る。不穏なイントロダクション。
2.Unreal Estate 05:09 ★★★★
とぎれとぎれのノイズまみれのベース。電波状態が悪いような。ドラムが入ってくる。全体的に音がローファイというか、ガレージ的な音。AMラジオ的な。ボーカルは力強くマッチョな感じ。スロウテンポでリフが曲を引っ張っていく。曲の起伏、うねりが強まっていく。全体的に寄せては返すような、リフもボーカルラインもリズムも、波のように上下、緩急が起きる。音は急にクリアになるわけではなく、ラジオのような、どこか遠いノイジーな音のままだがだんだんとレイヤーが重なっていく。スロウでヘヴィだがグランジとは違う、コード進行はもっとカラッとしていてストーナー的。しっかりとダイナミズムがあるが、スロウでゆらゆら揺れるストーナー。
3.Arrows 03:53 ★★★★☆
タイトルトラック。ベースリフから曲がスタート。これも酩酊するリズム、初期サバスを煙で燻したような音像。そうだ、ラジオというより煙がかっている。煙に巻かれるというか。音は聞こえているのだが全体像はノイズにまみれて少し見えにくい。ひとつひとつの音の輪郭が少し溶け合っている。司会を遮る煙のようにノイズが漂っている。
4.My Disaster 01:56 ★★★★☆
ちょっとアップテンポに。ハードコア的な勢いがあるが音像はよりノイズが増した。炎が燃え盛って黒煙で視界が遮られたような。煙が増している。ガレージロック、ロックンロールテイストもあるが音がノイズのレイヤーに埋もれていて、迫ってくる、体をリズムが動かす感じよりも上昇する煙の感覚が強い。
5.Two High 03:54 ★★★★
やや跳ねるようなリズムで明るさが増す。少し視界が張れるように思うがギターノイズは続いている。ドラムビートはダンサブルで性急。グルーヴがある。こういうのはUSメタルならではの音像かもなぁ。こういうビートとかグルーヴは。力強くて直情的なボーカルと絡み合いが心地よい。
6.Anodyne 03:35 ★★★☆
一曲一曲は結構短い。酩酊する感じが強いのだが曲が小気味よいのでどんどん展開していく。先日聞いたBirds of Mayaは演奏は小気味よくても曲が長くて酩酊感があったのだけれど、こちらは逆。曲構成そのものは性急で、ハードコア的でもある。冗談のように「ギターソロもボーカルもなし」とリリースノートに書いていたが、あながち間違いではないかも。ギターソロはあまりないっちゃない。ボーカルはガンガン入ってくるが、ボーカルがそこまで前面に出てくるわけでもない。短い曲構成で畳みかけるような展開こそが真骨頂なのだろう。ボーカルもダイナミクスの一部として機能している。
7.Interop-Mod 01:02 ★★★
ギターノイズが迫ってきて途切れる。ノイズとドラムの実験的なインタールード。ライブの途中のような。フィードバックノイズで遊んでいる。
8.Fonzi Scheme 04:13 ★★★★☆
ホームコメディからとった、とリリースノートにあったがかなり重めのリフ。ドゥーミー。そんな笑える感じのスタートではない。ベースの音が少し人のうめき声のように聞こえる。少しユーモラスなリフに変わり、ボーカルが入ってくる。ボーカルが歌い上げる、カントリー的な声に。この曲はオルタナティブメタルっぽいな。煙ったようなノイズサウンドは相変わらずだが、歌メロはハキハキしている。オルタナティブメタルというよりサバスを意識しているのかな、オジー的なボーカルラインというか。弦楽器が入ってくる。ヘヴィなリフと優美な室内楽的サウンドの絡み合い。チープな(悪い意味ではなく)メタリカのS&Mのような。ガレージ版S&M。
9.Days Collide 05:44 ★★★★
アルペジオからスタート、少したわんだ弦、どこか乾いた音、風の音のようなノイズ。ヘヴィなリズムとボーカルがのっそりと入ってくる。じわりと展開するコード。途中からアップテンポに変わる。全体としてかなり硬派な音像。Helmetと一緒にライブをした、とあるが、Helmetとかソニーロリンズとか、あのあたりの男臭くて硬派な音像を思い浮かべる。ボーカルスタイルもあるだろうな。ただ、音は全体的には煙に巻かれた、霞がかったような音像。ライブハウスの轟音とも言えるかもしれない。とはいえ勢いに任せているというよりは統制されたノイズ。だから、煙が漂っているように思う。演奏が燃え盛っていて、そこから立ち上る煙とでも言おうか。ぐいぐいたたきつけてくるというよりは、少し耳を話すと自分の位置を見失いそうというか。
10.Rabbits in Hives 01:36 ★★★★
疾走曲、ハードコア。こういう短い曲を挟むのはハードコア的。この曲は音も中音域に固まっている。途中で曲構成が展開する。短い曲なのにしっかり展開する、というのもハードコア的。Dead Kennedyとか。コーラス、というか、展開したパートはボーカルもメロディアス。
11.Why 03:08 ★★★★
ノイジーなギターと共にアコースティックギターが入ってくる。ボーカルがクリーントーンで、力を抜いた歌が入ってくる。これはグランジっぽい。静ー静ー動ー静のピクシーズ(~ニルヴァーナ)テンプレート。その曲構成をドゥーミーなリフとストーナー的な燻ぶったサウンドが包み込んでいる。
12.Dr. Owl 03:33 ★★★★
アップテンポ、勢いよく言葉とボーカルが飛び込んでくる。渦を巻くベース。バンドが燃え盛っている。ノイズも渦を巻く。バンドが火元で、そこからノイズの渦が次々と生み出される。ギターサウンドがさまざまな色の煙になって視覚化されるようなイメージ。疾走するハードコア、中間部でブレイクダウンパートが入る。
13.Funeral Coach 03:25 ★★★★☆
70年代ハードロック的なリフ。クラシカルなロックのテイスト、くっきりとしたリフの輪郭がある。サバスよりディープパープル的な。キャッチーさもあるメロディライン。Kyussとかに近いな。
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