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藤井風 / HELP EVER HURT NEVER

J-POPの新星、藤井風。周囲でおススメしている方が多かったので聴いてみました。曲がいいですねー。自然体でいいメロディ、言葉の載せ方も心地よい。惜しむらくはちょっとプロダクションというか、音作りがのっぺりしていて迫力がなかったこと。もっと生々しい低音とか、音響的な魅力があれば名盤になった気がします。ただ、新人だしデビュー盤としては佳作、ライブでどう化けるか、今後どのような音作りになっていくか楽しみです。

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2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.何なんw
クラシカルなイントロのオルガンから一瞬で無音になりアカペラへ
そこからすこし粘っこいファンキーなライン、粘っこいとはいえ日本的、最近のUSのR&Bのような粘り気はない
ボーカルが入ってくる、少しスモーキーな声
音は中音域、各楽器は細めで繊細、やや音の奥行きは平坦というか、J-POP的
ミキシングの好みとか流行りの音の問題だろう、あまり各楽器の生生しさは薄い
歌メロは爽快に流れていく、自由に上下移動する
基本的にコーラスに向けて上昇していく
上がっては下がる、問いかけるようなメロディ
言葉はかなり自然に流れていくが意味がない言葉ではない、聞こうと思えば聞き取れる
星野源にも近い、ポップマニアな感じ
とはいえマニアックというよりは王道のアレンジ、丁寧に作られている
言葉や音のチョイスに遊び心もあって、マニアの視野の狭さはなく娯楽性が高い
声の表情が変わり切なげに、得体のしれないスキャットからコーラスへ
楽器はかなりファンキー、もっと各楽器が分離して奥行きがあればいいのに
曲は良いと思うが音作りがいまいち
★★★☆

2.もうええわ
たゆたうようなキーボード音とボーカル、この曲は声が近い
音質、音響が心地よさが増した
コード展開が凝っている、「もうええわ」というのはタイトルを見ないと聞き取れないな
スキャットのように聞こえる、面白いセンス
ベースは打ち込みだろうか? 生弾きならもう少しグルーブがあってもいいと思う
声の表情は豊か、ブリッジからコーラスで少し転調感がある、コーラスの中でもコードが平行移動する
自然な感じだから転調ではないのだろう、上手い
ライブだともっと生々しくて感動的かも
録音が平面的に感じるのはなぜだろう
ベース、ドラム、キーボードの音域がぶつかるというか、それぞれ音は聞こえるのだけれど音域が近い
それが一体となる心地よさはあるのだけれど、もうちょっと今のUSのR&Bの音でも聞いてみたい
その方が迫力があると思う
★★★★

3.優しさ
ピアノのコードのイントロから、これもリードトラックでシングルカットされていたな
ボーカルが入ってくる、印象的なメロディ
かなり抒情的だが酔いしれる感じではなくさらっと歌っているのは好印象
ささやき声のようなボーカル、ボーカルパフォーマンス、声色の使い分けはうまいし効果的
コーラスで転調はしていないが展開した感じがある、ブリッジからコーラスに入る前に一瞬他のキーを入れているのかな
上昇と下降を繰り返しながら和音やパターンを繰り返すことでメロディを印象付ける
カラオケで歌うと心地よい、適度に技術的で陶酔感が得られるメロディ
やはりこの辺りはアラブ~中央アジア~日本はつながっているのかもしれない
極端に細かくないが、節回しの延長線上にある、ビブラートを和音的に美しくしたようなメロディ展開と言えるかもしれない
★★★★

4.キリがないから
浮遊するキーボード音にスキャットのコーラス
電子音、かなりポップな音作り
もう少しロック的というか、生楽器やライブ感があってもいい気がするが、音楽性としては
揺れるメロディ、上下にこぶしを聴かせるような、ちょっと祭囃子的な
レミレドレミレドレミレドレ、のフレーズ
言葉より音に耳が行く、きちんと歌詞があるが、日本語の歌詞ではあるが意味よりメロディの方が入ってくる
流れるようなメロディなのだろう
次々と展開していき娯楽性は高い、音に遊び心もある
J-POPとしてはかなり実験的な音作りかもしれない
★★★☆

5.罪の香り
急に歌謡曲的というか、大げさなイントロ
歌いだしも歌謡曲的、これはアレンジが活きている
こういうアレンジだとこういうちょっとまとまった、まとまったぼんやりとした音像が合う
全体として勢いが出るというか
メロディと歌詞があまりリンクしていない、感情的に盛り上がる歌詞とメロディのリンクの大げささが少ない
音として心地よい場所、バッキングの隙間をボーカルが埋めていく、基本は歌がありそれに対するバッキング
ただ、バッキングの和音のテンションや展開をけっこうボーカルメロディが引っ張る
だから「この瞬間にここに音が欲しい」というのをボーカルが埋める
人の声が一番耳を惹くから合理的なのだが、ボーカルラインがけっこう楽器的
ジャズのピアノソロのような響きもある、もちろん、速さに限界はあるのだけれど
★★★★☆

6.調子のっちゃって
スロウでジャジーなトラック
ベースの音にもう少し凄味というか生々しさが欲しい、演奏の空気感が薄い
ボーカルパフォーマンスは見事
口ずさむような、手癖ならぬスキャットのようなメロディ
これはあまり楽器性がない、いわゆるボーカルメロディ
サラッと流れていくが、アルバムの流れの中ではちょうど良い一息か
ベンフォールズファイブとかに近いのだろうか、ピアノというかキーボードロック
どの曲もけっこう魅力的、ただ、心を鷲掴まれるまではいかない、惜しい
★★★☆

7.特にない
ヒップホップ的なリズムに、口ずさむような、鼻歌のようなメロディ
つぶやくような声、言葉の意味とメロディ、声色がマッチしている
途中からメロディ主体になっていき言葉の意味は音に溶けていく
デビューアルバムということを考えればかなり音も遊んでいる方か
音域のレンジが狭いのはなんでなんだろうなぁ、もっと広くした方が気持ちいいと思うのだが
再生環境とか配布環境の問題なんだろうか
★★★

8.死ぬのがいいわ
ピアノとスキャット、そこからかなり低音のつぶやくようなボーカル
歌メロはどの曲も変わっていて個性がある
アレンジや音作りをもうちょっと曲ごとのキャラクターに合わせて変えればいいのに
リズムがけっこう乱暴に前に出てくる
メロディ、コード進行はかなり凝っている、ちょっと日本民謡的なメロディ
通りゃんせ、とか、ちょっとマイナーで不気味だけれど親しみやすいメロディ
昔の民謡はけっこうダークだからね
リズムが打ち込みで、それほど音色にもこだわりが感じられないのが残念
★★★☆

9.風よ
生ピアノのイントロからボーカルが入ってくる
ピアノ弾き語り
ベースとドラムが入ってくる、ジャズバラードの構成
この曲は生演奏、ライブ感がある
ボーカルパフォーマンスも含めてエモーションの高鳴りを感じる
高音の伸ばし方が暑苦しくなく、適度に抜くところが上手い
ライブ感があってよかった
★★★★

10.さよならべいべ
急にロックバンドフォーマット、8曲目以降、いろいろと音にバリエーションが出てきた
これは意図的だなぁ、後半で遊び心のある曲を入れてくるとはなかなかうまい
アレンジはロックバンド、ただ、いわゆるポップの人がやるロックなのでギターサウンドの迫力は薄いが
小気味はいい、リズムが跳ねている
歌メロにも遊び心がある
後半になるとボーカルも乗ってくる、リズムに乗ってだんだん温度が上がる
こういう「聴いているうちに盛り上がっていく」感じは大切だと思う
ジャンルに限らず、上手いアレンジや名曲にはそういう感触がある、聞いているうちに熱量が上がる
この曲はそれに成功している
★★★★

11.帰ろう
ピアノの音から、かなり生々しいピアノの音
ペダルを踏む音などの空間音が聞こえる
ボーカルが入ってくる、弾き語りだろうか
のっぺりとした感覚がない、ピアノの音には奥行きがある
オーケストラが入ってくる、ボーカルメロディがかなりクラシカルに上下する
ちょっとコーラスがボーカルで隙間を埋めすぎというか、言葉数が多い
オーケストラとリズム、ピアノ、ボーカルが絡み合う
二番からリズムが変わり跳ねる感じが出てくる、これは景色が変わって上手い
ブリッジでコードの展開感がある
ただ、ブリッジからコーラスまでボーカルが隙間なく上下が激しいメロディと言葉を紡ぐのでちょっと余白がない
今度はボーカルのリズムがのっぺりしているように感じてしまう
★★★

全体評価
★★★☆
作曲センスが高く、どの曲も魅力的、明らかにテンションが下がる瞬間がなく楽しく聞ける
ただ、突出した瞬間が少ない、このボーカルや作曲能力をまだ活かしきれていないように感じる
曲のアレンジが前半比較的のっぺりしているし、後半何曲かはバリエーションが出てきたがまだおとなしい
各曲のキャラクターのバリエーションに対して編曲というか、バリエーションは出そうとしているが曲の中で熱量が高まりきらない
どの曲もいい曲だと頭では思うのだけれど、心が動いて盛り上がる瞬間が少なかった
ライブだとまた違った感じになるのだろうか、デビューしたばかりだからライブを重ねていくことでそのライブ感が音源にもフィードバックされていくかもしれない
クオリティは高く、個人的にはあとちょっとで感動的になるのになぁという惜しい作品

ヒアリング環境
家・夜・ヘッドホン

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