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58.ポップスから見た音楽スタイルとしてのメタル = Poppy

Poppyは1995年生まれ、2015年デビューのアメリカのアーティストで、2014年からYouTubeで活動を開始。同じフレーズを繰り返す10分の楽曲や、アンドロイドというか生身感の薄いキャラクターづくりなどポップアート的な映像と音楽で人気を博しています。ファッション雑誌のVOGUE Girlでインタビューされたりとポップアイコン的な存在ですが、3rdアルバムで突如メタル路線に。冒頭紹介したConcreteのポップ+メタル路線で2020年にアルバム「I Disagree」をリリースしています。Babymetalを筆頭としてKawaii Metalというジャンルが形成されており、そのジャンルに属するバンドはほとんどが日本のバンドですが唯一US勢でそのジャンルのアーティストとして扱われています。英語圏での扱われ方を知るために英語版のKawaii Metalのバンドリストはこちら

さて、実際聴いてみるとBabymetalは「メタル・ミュージシャンがメタルの語法でアイドルポップを取り込んだ」という印象ですが、Poppyの場合は逆で「ポップ・ミュージシャンがサウンドスタイルの一つとしてメタルを取り込んだ」感じを受けます。ベースがポップスですね。このPoppyという人は日本文化、J-POPが大好きなので、いわゆる日本のKawaii Metal勢からインスパイアされたことは間違いなさそうですが、それをあくまでアメリカのポップ・ミュージシャンの視点、センスで再解釈しているのが新鮮です。

日本好きが高じて不思議な日本語をところどころに散りばめるアーティストですが、3rdアルバムのタイトル・トラック「I Disagree」がこちら。日本語で「私はあなたに同意しません」とスタートします。こういうカタコトの日本語って妙にポップですね。

Kawaii Metalについても少し触れてみましょう。先ほど紹介したKawaii  Metalの英語版wikiリストにはいろいろなバンドが上がっていますが、音楽ジャンルというよりルックスやメンバー構成の方が重要なのかもしれません。若くてアイドル的な女性がボーカル、またはメンバー全員が女性で、かつハード目の音を出しているバンドだととりあえず分類されているようです。音楽性で言えばあまり統一感はなく、ハードロック・ジャパメタ・ハードポップ・ニューメタルなどに分類されるバンドが混在しているようにも感じますが、全部に共通しているのはいわゆる「J-POP的なメロディ」で、それらは世界のメタルリスナーには同じようにエキゾチックでオリエンタルに聞こえるのかもしれません。Poppyに続いて、いろいろな国のポップミュージック、特にアイドル的な女性歌手とメタルが融合していくと、サウンドスタイルとしてのメタルを好む人がもっと増えそうで楽しみですね。

他のKawaii Metalバンドからいくつか面白い曲を紹介します。

説明しようとすると軽い眩暈がするグループで、いろんな意味でサイケデリックでプログレッシブ(かつマッシブ)です。女装パフォーマーLadybeard(レディビアード)&筋肉アイドル才木玲佳による、霊長類最強アイドルユニット「DEADLIFT LOLITA」。「筋肉×元気×カワイイ」をテーマに2017年から活動しています。二人ともプロレスラーで、ガチの筋肉の持ち主。Ladybeardはプロレスラーとしても女装しています。

LedybeardはもともとLADYBABYというアイドルユニットのグロール担当。LADYBABYはすでに活動休止してしまいましたが、2015年に女性ボーカルとデスボイスを駆使する音楽ジャンル「Kawaii-Death(カワイイデス)」を掲げてデビューしたBabymetalフォロワーです。

そろそろ筋肉から離れましょう。

DOLL$BOXX(ドールズボックス)は2012年デビューのガールズハードロックバンドです。ボーカルのFukiはこのバンドの他にLIGHT BRINGER、Unlucky Morpheus、Fuki Communeといったバンドでボーカルを務めており、ジャパメタ界の新世代の歌姫の一人。アイドルだと思わせてハード、という小芝居のMVですが、確かに演奏力はしっかりしています。Fuki界隈のバンド群は最近のdiscunionでもかなり推されている印象です。

ただ、このストーリーだともっと激しいのをぶちかましてほしいところです。Arch Enemyぐらいだったらまさに驚愕すると思いますが、MVの中の男性たちがそこまでびっくりするほどヘヴィでもないよなぁとも思ったり。このMVのシチュエーションを見てメタルではありませんが、アイドルイベントにアイドルとして出演して情念の弾き語りを披露して観客の度肝を抜いた大森靖子を思い出しました。こちらの記事の後半で取り上げているので興味のある方はどうぞ。

話を戻しましょう。Kawaii Metalリストにはありませんが、女性バンドでジャパメタの星といえばLOVEBITES。2017年デビューながら精力的にUSツアーも行うなど欧米圏でも知名度も上がってきているのでこのリストにないのが謎ですが、WackenやBloodstoneといった欧米のメタルフェスにも出ていたり、歌詞も英語なのでもっと正統派のメタルバンドとして扱われているのかもしれません。

Babymetalフォロワーの中で頭角を現しつつあるのがPassCode。2013年活動開始で、Babymetalと同様、アイドルユニットがボーカルを担当し、バンドはプロのミュージシャンが担当しています。2020年リリースのSTARRY SKYではオリコンチャート1位を獲得しました。

Kawaii Metalに分類されるアーティストの中には地下アイドルというか、ちょっとさすがにメタルとはいいがたいアーティストもいますが、日本の音楽シーンの中にはハードロック、メタルのサウンドスタイルを好み、再現できるだけのミュージシャンシップがあるプレイヤーが多数います。そうした土壌があってKawaii Metalは芽生えたのでしょう。アメリカではチャート上位はヒップホップやEDMが主流でバンドサウンドはややメインストリームから外れていますが、日本ではバンドサウンドがチャート上位に来ています。一つにはゲームやアニメがエモーショナルなシーンや戦闘曲、高難易度曲としてハードロック、ヘヴィメタル系の楽曲を多く採用しているためそうした音楽を好むユーザー層が一定数確保され続けていることもあるのでしょう。今日最後の曲はそうしたゲーム系のミュージシャン達による高品質なメタル曲でお別れしましょう。Kawaii Metalの土壌になっているのはこうしたプレイヤーたちだと思います。

それでは、良いミュージックライフを。

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ワールド・ミュージックとヘヴィ・メタルを中心に好きな音楽について書いています。アングラシーンから世界を獲ろうとしているミュージシャンが好きです。日常に溶け込む音楽が好きです。旅で出会う音楽が好きです。音楽は環境と不可分なところがある。だから音楽はバーチャルな旅でもあると思います。

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