35.ギターと語りの異種格闘 = MOROHA

ラップというより講談というか、韻よりも物語を重視した歯切れ良い語り。弾き語りのギターではなく、単体でソロギターとして成り立つバッキング。コーラスやメロディーはなく、ギター1本、MC一人。二人組。ギター+ボーカルという遥か古来からあるスタイルながら異種格闘感が凄い。衝撃。

ラップ+ギターが新しいわけではない。もともとブルースはそういうものだし、ボブ・ディランはギターに語りを乗せた。日本でも友部正人の「大阪にやってきた」など70年代初頭に完成度の高いトーキングブルースがある。アコースティックギター一本で美しい音楽を奏でるのはマイケル・ヘッジズあたりが1980年代から始めた手法だ(源流はフラメンコとクラシックギターだろうか)。以前、ソロプレイヤーについてはこちらの記事で取り上げた。ただ、手法の新しさもそうだが、まず伝えたい初期衝動があって、そこからこのスタイルに模索してたどり着いた感がある。

どの曲を聞いてもテンションが同じなのもよい。だんだんとアレンジに凝っていったり、メロディを導入していくのかもしれないが、今まで出した4枚のアルバムではスタイルがまったくぶれていない。ギターとラップだけ。ここまでストイックに同一スタイルで音楽性を拡張しているアーティストも珍しい。

ギターと声だけでどこまで世界を作れるか。デビュー当時の大森靖子以来の衝撃を受けた。ただ、大森靖子は「表現したい」が初期衝動ではなく、「音楽をやりたい」が初期衝動だから、どんどん「音楽家」として拡張している。MOROHAはたぶんタイプが違うのだろう。


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