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写真 湿原植物を巡る旅 (2021)

県道321号から道を1本入ると、2.2haの泥炭湿原を整備した場所があった。

植物の自生地となっており、水生植物が移植され保護されていた。昭和に入って開拓が始まり、湿原はほとんどが埋め立てられ、今ではわずか数パーセントを残すのみとなっている。

空気は温かく、静かだった。

そこに湿原植物園があった。私は植物園の中に入った。園内はずいぶんひっそりとしていて、温度が下がっていくようだった。

四阿 (あずまや) には年配の夫婦が座っていた。こぎれいな年配者で、上着をエレガントに着こなしていた。定年退職をされているようで、それで年金を受給して生活するという種類の年配者らしい。

私はその隣のミズバショウ池を通った。そして、山野草園へ進んでいった。

ただすぐ疲れてしまった。残念ながら、10日間の口内炎の痛みから回復するのは生半可なことじゃない。

私は禁酒しているのだが、それにうんざりしている。酒を手にしている人間を見ると、私もあちら側へ行きたくなるからだ。本当はあっちに行って、くだらん連中相手にお愛想を振りまきたいところだ。

しかし、私が酒浸りを続けることは口内炎が早く治らないことを意味している。そうなるとろくな仕事もできない。最近になって悪化した。

以前は酒なんていくらでも飲めた。若くて体が頑健だった頃は。しかし30を超えると、同じようにはいかない。

1キロばかり進んだ左手に大日ヶ岳 (1,709m) が見えた。その風景がどんどん背後に過ぎ去っていき、やがてまぶしく暑くきらめくスイレンの池が見えてきた。

私は池の泥濘 (ぬかるみ) に足を取られないように注意を向けた。スイレンの池を訪れたのは1度だけだし、それも木陰で暗くなっていたからだ。

その池のスイレンは立派だった。ずいぶん苦しんで成長したのだろう。

池の上に咲いているじゃないですか。

私は英国人のガーデニング日記を読んだことがある。ということは、私は知性があり、文学に精通し、一家言ある人間だということになるのではないか。

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