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GWソウル旅 延長線(狎鷗亭)

3泊4日の韓国旅のはずが、私が帰りのタクシーで携帯を忘れるという失態によって、まさかの延長戦に突入することになった。
タクシーの運転手さんが空港に戻ってくるまでの間に、その日のホテルの確保と、帰りの飛行機の確保をすることとした。

もともと予約していた帰りの飛行機代は戻ってこないにも関わらず、妻は平謝りをする私に、「そんなに謝らないで」と声を掛けてくれた。むしろもう1日韓国にいることができる!というポジティブな方向に捉えてくれた。あまりの優しさに涙ちょちょぎれ。
せっかくもう1日韓国に入れるのだから、飛行機も夜に取ってどこか別の場所を観光することにしようと決めた。
妻が、3日目に予約をするも行くことができなかったロンドンベーグルミュージアムへ行きたいということだったので、狎鷗亭店へ行くことと決めた。
そうしたらあとはホテルを取るだけである。ホテル予約サイトで空港のある仁川と狎鷗亭にアクセスの良い場所で取ることとした。

そんなこんなしていたら、タクシーの運転手さんが空港に到着した。航空会社のスタッフの人がタクシーの運転手さんとメッセージでやり取りをしてくれていて、サポートをしてくれた。運転手の人は、「もうほんまにお前は気を付けや」みたいな表情をして、携帯を返してくれた。代わりに携帯を空港まで届けてもらうための運送代としてタクシーメーターに書かれている料金を支払った。日本円で3000円くらい。悪い運転手だったら莫大な料金を請求してくるのではないかとビビっていたが、そんなことはなかった。
タクシーの運転手さんとやり取りをしてくれた航空会社のスタッフさんも、タクシー運転手さんもいい人たちで、無事に携帯が返ってきた。私の韓国大好き愛は急上昇していた。これまで韓国旅行に気乗りしていなかった自分を叱ってやりたい。食べ物は美味しくて、洋服もおしゃれで、いい人ばかりの韓国!韓国最高!バンザイ!そんな気持ちだった。

携帯を無事に受け取ることができた私と妻は、晩御飯を食べて、下着類を購入し、ホテルへ向かうことにした。空港を出る時点ですでに夜の10時をまわって疲れはピークに達していたが、最後の力を振り絞った。途、電車の乗り換えをミスってしまい、とことん今日という日はついていないなと思ってしまった。

ホテルへ到着したのは夜の11時半頃だった。江南のビジネス街にホテルはあった。ホテルに入り、チェックインの手続きで予約した氏名を伝えると、受付のおじさんが、「おかしいな」と言いながら、首を傾げている。妻と目を見合わせる。受付のおじさんから、「本来予約できない部屋で予約ができている。今日は満室なんだよ」と伝えられる。肩から崩れ落ちそうになってしまう。飛行機に乗れず、延泊することになり、さらには宿無しになってしまうのか。受付のおじさんが、苛立ちを見せながらも、「ちょっと待ってろ」というので、ホテルのエントランスで妻と最悪の事態を想定して、別のホテルを調べることとした。
しばらくするとおじさんが戻ってきて、「部屋用意できたよ。部屋のランクをスイートルームに上げておいたから」と部屋の鍵を渡してくれた。
渡されたルームキーの番号の部屋を開けてみると、嫌な色をしたシャンデリアと、大きいソファとベッド。風呂場にはジャグジー付きのお風呂があった。うおーと妻と叫んだのも束の間、テーブルの上に殺虫剤があったり、お風呂の栓はなく、代わりに黄色いアヒルちゃんのシリコンで栓をしなくてはいけなかったり、ベッドのシーツの裏には前の宿泊者のものと思われる髪の毛が数本落ちていたりと、B級スイートルームという感じがした。
まあでも部屋に泊まって、湯船につかれるだけで、幸せだった。その日一日はとても長く感じた。
妻と一日を振り返り、「なんか今日帰る実感が湧かなかったんだよね」という話をした。不思議と自分も帰る実感がなかった。旅行の最終日は、いつもセンチメンタルな気持ちになるのに、そういうものが何もなかったのだった。きっと帰れないことをどこかで予感していたのかもしれない。


翌日、激込みのベーグル屋さんへ向かうために8時には起床した。ついにこの旅も終わって帰らないといけないのかという実感がその日はあった。朝の支度をしているときに、昨日下着を買いはしたが、靴下を買い忘れたことに気づく。ただキャリケースを漁ったら、前日洋服を買った際におまけでついてきた靴下が出てきた。昨日とは打って変わって、追い風が吹いている気がして、今日は絶対帰れる気がした。
また妻がネットで目的のベーグル屋さんが、どうやらお店に行かなくてもアプリで事前に予約できるということを発見したため、ホテル内でベーグル屋さんの予約をして狎鷗亭へ向かった。
お店に到着した同時に、アプリの予約していた順番が回ってきてお店の前で待つことなく店内に入ることができた。2日前は5時間待ちだったのに。またまた追い風である。

とてつもなく行列のできるベーグル屋さんということで、思い切って6つベーグルを買ったが、3つを2人で分けて食べたらお腹いっぱいになって、残りのベーグルは持って帰ることにした。

ベーグルを食べたあと、街を少しプラついた。妻はここでも買い物をしていた。妻の物欲はとどまることをしらないようだった。

昨日の反省もあって、ちょっと早めに街を出て空港に向かうこととした。宿泊したホテルの最寄り駅から、空港までの直通のバスが出ているので、ホテルに荷物を預けていたため、ホテルから荷物を取ってきてから、バス停へ向かう予定だった。ホテルに行く途中にバス停の時刻表があったので見てみると、バスの次の出発時刻は10分後、次のバスは40分後であった。ホテルに荷物を取りに行ってバス停に戻ってくると、およそ15分かかるので次のバスへ乗るしかないのだが、そうすると空港に着く時間が少し怪しくなる。ホテルに着いた時点でやはり10分かかってしまった。暗雲が立ち込める。次のバスで空港に向かうとして、もし渋滞にハマってしまったら、ちゃんと帰ることができるのだろうか。昨日の失敗もあり、もうこれ以上延泊したくない。バスの出発が遅れていることを祈って、急いでバス停へ向かった。
バス停にはバスの姿はなかったが、キャリーバックを持った人がパラパラと残っており、もしかして、と思っていたら、空港行きのバスがすぐに来た。ベーグル屋に続いてまたもやジャストタイムでバスが来たのだった。昨日の向かい風はどこへやら、追い風ビュンビュンだった。バスは快適だった。

いつも時間に関して、ギリギリを生きている私たちだったが、この日は違った。空港でお土産を買ったり、最後の韓国料理を食べたり旅との別れを惜しむように時間を過ごした。

無事に日本へ到着し、家に帰って真っ先に妻と味噌汁を頬張った。トイレにはウォシュレットもついていて安心感がある。韓国も楽しいけど、やっぱり日本の方が落ち着く。
次の日の朝は、前日買った残りのベーグルをお昼に食べた。韓国にいる時に毎日飲んだアイスアメリカーノを求めている自分がいた。
GWの残りの日は家でILITを口ずさんでいる自分がいた。

旅行に行く前よりも確実に韓国のことを好きになってしまっているようである。

ムムム。