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【第3話】「こんなに色んな経歴があって、なんでうちに来たの」と、偵察がばれる。


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実家のヘアーサロンの椅子一台を借りて、ゼロスタートからコツコツと集客していた。ただお客さんを待っているだけでは、時間の無駄。攻めていく方法は無いかと思っている時に、ニュースで高齢化社会について流れて来た。

『日本の人口の4人に1人が65歳以上、介護士が足りない』

「そういや、うちの爺ちゃんも施設に入っていて、僕の父親がハサミを持って月に1度、施設で髪を切ってあげてたな〜」と思い出した。

「それだったら、施設を回って髪を切る『訪問理美容師』で営業をかけてみようか…」

実家の近所をググってみると、徒歩圏内で3〜4件の老人ホームがあった。10年以上も日本を離れている間に、近所にこんなに施設が増えていた。

思い立ったら直ぐ行動で、名刺とビラを作り、早速飛び込み営業に出かけた。

結果は…

「全く相手にされない」

入り口で対応してくれる介護士さんは、皆さん笑顔で接してくれるのだけど、責任者に話を持って行くと「もう業者決まってるから」と言って、目も合わせないで手でしっしと払われる。

どこも、こんな感じで相手にされない。最後に親切な老人ホームの責任者が話をしてくれ分かったのだが、訪問理美容専門の大手の業者が全域を支配していた。

札幌市内では、大きな業者が2軒あり、その1軒が訪問理美容師を募集していた。経験者優遇と書いてある。

昔は、精神病院の閉鎖病棟へボランティアをしていた事もあるし、寝たきりのお年寄りのカットと顔そりも何度も行った経験もある。ドイツの「平和村」では、中東やアフリカの紛争地帯で人命に関わる大けがをした子供達が保護され、平和村の施設で治療とリハビリをして、生活できるようになると本国へ返すというプロジェクトがあり、その子供達相手にボランティアのヘアカットもしていた。

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フリーランスを目指している人には、成功のエッセンスがこのエッセイに詰まっています。 2011年秋。長年の海外生活を終え、日本に帰国。顧客…

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