自分にしかできない仕事
こんにちは、Qnoir青山でフリーランス美容師をしている小川泰明です。
ありがたい事に、長いお付き合いをさせて頂いているお客様がたくさんいらっしゃいます。
一緒に歳を重ねて、それぞれの人生の岐路を報告し合えるお客様がいる、美容師としてこれ以上の喜びはありません。
長いお付き合いをさせて頂いていると、それぞれに色んなことが起こります。
もちろん良いことばかりではなく、時として試練とも呼ぶべき舞台に遭遇することだってあります。
抗がん剤治療によって髪が抜ける。
一時的な治療の副作用とはいえ、自分の髪が抜けてしまうことは大きな大きな心のショックだと思います。
もちろんジェンダーは関係ないことではありますが、それが女性であればその精神的な負担はより深いものだと察します。
そして、その状態で誰かに会って、自分の姿を見せるということは大変勇気のいることだと思います。
先日、その勇気を振り絞って自分の元に来て頂いたお客様がいらっしゃいます。
もう長くお付き合いをさせて頂いている大切なお客様のひとりです。
丸刈りでいいわよ。
僕は、一旦は受け入れたそのオーダーを飲み込むことができませんでした。
もちろん丸刈りをすること自体には何の問題もありません。
プロに髪を綺麗に整えてほしい、その思いだけを汲み取れば何ら不思議なことなどありません。
しかし、何故わざわざ自分の元に足を運んで頂けたのだろう?そんな疑問が自分の胸を深く突き刺したのです。
ただ抜けてしまった髪を整える意味での丸刈りであれば、自分じゃなくてもいいんじゃないか。
ご自宅でご家族がバリカンでやることもできたんじゃないか。
電車に乗って、カット代をお支払い頂いてまで、自分を必要としてもらえたことに最大限で応えてあげたい。
大変身勝手なお話かもしれませんが、ご本人にもご納得頂いた上で、カットに関してはすべてお任せ頂き、丸刈りではなく「ヘアスタイル」としてデザインを提供させて頂きました。
もちろん、伸びても変じゃない、再び髪が抜けたときもなるべく変にならない、それが大前提の元でのデザインをさせて頂きました。
自分の価値観の押し付けになっていないか?不安と葛藤はありましたが、笑顔でお帰り頂く姿を見れてとてもうれしい気持ちになれました。
自分にしかできない仕事は何だろう?
まもなく丸20年を迎える美容師人生の節目の年に、またひとつ大切なことをお客様から学ばせて頂きました。
勇気を持って自分の元に来て頂き、自分にヘアカットを任せて頂けたことに心から感謝しています。
僕は、昨今のSNSで熱心に発信をされている世の美容師さんから比べれば、怠惰で志もなく、目標も夢もない、皆さんががっかりするような美容師です。
僕にできることと言えば、目の前のお客様に対して、そしてそんなお客様の髪の毛に対して、正直に誠実に向き合うこと以外にありません。
それでも、どうか困ったら、小川の元へ来てください。
白髪が増えても、髪の毛が薄くなっても、年齢を重ねてシワが増えても、子供が産まれてなかなか来れなくなっても。
仕事がうまくいかない時、プライベートで凹んでる時。
嫌なことがあった時、うれしいことがあった時。
愚痴りたいとき、自慢話がしたいとき、リフレッシュしたいとき、何でも構いません。
期間が1年空いても、3年空いても、よっ!久しぶり!って会いにきてください。
皆さんの人生の泣き笑いを、小川にもちょっとだけ分けてくださいな。
髪を切れるというだけの存在価値、自分が20年前に思い描いた美容師像はそんなのじゃない。
あ、そうだ小川のとこへ行こう。
皆さんにとって小川という美容師が、「髪を切る」ただそれだけのための場所ではなく、ふとしたときに足を運びたくなる、そんな存在で在れるようこれからも精進していきます。
最後になりますが、いつも小川の元に足を運んで頂き本当にありがとうございます。
小川泰明
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