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セミナー受講履歴#4_たし算が難しい理由ご存じでした?(ABC予想はめちゃくちゃ面白い!)

はじめに


セミナー受講履歴としていますが、先日NHKで放送されていた、「数学者は宇宙をつなげるのか?」という番組を観てあまりに面白かったので、このセミナー受講シリーズのなかでまとめることにしました

私は数学は好きですが、数学者でもなく専門でもありませんが、そんな私がABC予想というものがざっくりどんなものか理解でき、世の中の不思議に迫ることができました。

その不思議の元がまさかの

たし算!!

最も算数・数学の基礎であり、難しいと考えたことなんて一度もありませんでした。
しかしそこを追求することで新しい世界が開けるのです!

文字数:約3,200

1.かけ算は簡単


ミッシェル・ワルドシュミット博士が最初に「かけ算は簡単で、たし算は難しい」という説明をします。

ん?

というのが正直な感想です。
いやいや、たし算の方が絶対簡単でしょ!と思うのですが、かけ算は素数に分解できるという点から、圧巻の理論が始まります。
それは

かけ算は右辺(子)から左辺(親)が分かる

というアプローチです。
どういうことかと言うと

例えば4×14=56について考えてみます
素因数分解すると

(2×2)×(2×7) ={(2×2)×(2×7)}

となります。一見当たり前に思えるかもしれませんが、確かに右辺から左辺の要素がくっきり見えます。
試しにもう1つ、10×34=340もやってみます

(2×5)×(2×17) = {(2×5)×(2×17)}

当たり前すぎるので、なんでもう一つやるの?という感じかもしれませんが、要するに「右辺を子」「左辺を親」と見立てて素数というベースとなる数に落とし込むと、子に親の遺伝子がそのまましっかり継承されています。
かけ算はとても素直なロジックゆえに数学者からすると簡単ということです。

2.たし算が作る不思議


かけ算が親子関係を崩すことなく、分かり易く成り立っていることがわかったので、次に同じ式に対して足し算を行ってみます。

4 + 14 =18
10 + 34 = 44

さて、これを素数に分解する

(2×2) + (2×7) =  (2×3×3)
(2×5) + (2×17) = (2×2×11)

おーーーー!!
なんとかけ算のときに成り立っていた左辺と右辺の親子の継承関係が完全になくなっています。

これが数学者にはややこしい事象らしく、たし算が難しい理由ということです。
番組では、もしフェルマーの最終定理がかけ算であれば、これほど簡単な定理はなく、足し算ゆえに350年も解明されなかったというのです!

もう面白すぎて、この辺りから番組の虜になっていました。

3.かけ算と足し算の関係を解くABC予想


ここまでで「かけ算は簡単で、たし算は難しい」の意味が分かったかと思います。

ゆえに、たし算における遺伝関係をどうやったら明確にできるかを考える数学者が後を絶たなかったのですが、1985年にジョゼフ・エステルレ博士とデイヴィッド・マッサー博士によってABC予測(abc conjecture)が提起されました。

私も詳しいことはよくわかっていないので、あくまで番組中の式を引用します

互いに素でありかつ a + b = c を満たすような3つの自然数a, b, cに対して
C / rad(C) < rad(ab)

良く分からない式ですね。
ちなみにrad(n)はnを構成する互いに異なる素数の積という意味だそうです。簡単な例でいうと

rad(4) = rad(2×2) = 2
rad(80) = rad(2×2×2×2×5) =2×5 = 10

ということみたいです。素因数分解したときに異なる素数があればそれだけを掛け算したした結果ということです。

とにかくこの式をちゃんと理解する必要はなく、ABC予想がもし成り立てば

足し算において右辺(子:c)から左辺(親:a + b)が予測できてしまう!

ということなんです。凄くないですか?
少しだけ式を書きかけるとより分かり易いかもしれません。

互いに素でありかつ a + b = c を満たすような3つの自然数a, b, cに対して
(a + b) /  rad(a + b) < rad(a × b)

このABC予想はたし算の世界とかけ算の世界の境界を示しているとも言えます。

4.宇宙際タイヒミュラー理論


ABC予想がなぜ凄いのかが理解できました。
もしABC予想が証明できれば、世の中の様々な事象が一気に方程式で表現できるようになり、理解できるようになるかもしれません。
そんなロマンも秘めた夢のある予測です。

しかしこれを証明するのが相当難しいみたいなんです。
数々の数学者がトライしましたが、完璧な証明に至っていません。

そんな折、2012年8月末に京都大学の望月新一博士が「宇宙際タイヒミュラー理論」を用いたABC予想の証明に関する論文をインターネットに公開しました。

当時この論文はあまりに難しく、従来の数学の常識を打ち破る内容だったため数学者すら理解ができなかったそうです。

簡単に宇宙際タイヒミュラー理論について説明します。
以下のステップで見ていきます


①まず宇宙Aと宇宙Bという世界を仮定し、このAとBの数学世界は全く同じです。

②次にこのAとBを2乗した数字で繋げていきます

宇宙A) 2 → 宇宙B)4
宇宙A) 5 → 宇宙B)25
宇宙A) 9 → 宇宙B)81

③宇宙Aでかけ算をし、宇宙Bとつなげます

宇宙A) 3×17 = 51

51の2乗は2601なのでこれを宇宙Bとつなげて、2601を素因数分解すると

宇宙B)2601= (3 × 3) ×(17×17)

となり、宇宙Aと宇宙Bは矛盾なく繋がりました。

④次にたし算における宇宙Aと宇宙Bの関係をみてみます

宇宙A) 3 + 17 = 20

20の2乗は400なので、

宇宙B)400 ≠ (3×3) + (17×17)

この「宇宙際タイヒミュラー理論」によってかけ算は成り立つがたし算は成り立たない、すなわち、たし算とかけ算を独立に扱う柔軟性を手に入れるアプローチである

と言えます。


もはや哲学のような話になって、100%理解できていませんが、なんとなく凄いというのは分かりましたが、多くの数学者は宇宙Aと宇宙Bは全く同じ数学世界と仮定しておきながら、なぜ違うのか?という矛盾が数学の真理に反しているということで、(未だに)反対する人も多いそうです。

5.数学から考えるモノの見方

この番組の面白いところは、この宇宙際タイヒミュラー論という新しい数学の概念から、人々の思考にまで考察している点です。

かつてポアンカレは

「そもそも数学は、違うものを同じと見なすことで誕生した」

という言葉を残しています
トポロジーなど新しい数学の概念も、変形した後の形が同じであるということで、全く異なるコーヒーカップとドーナツを同じと考えます。

数学における真理とは「常に同じである」が成り立つことが大前提になっています。

ところが、この宇宙際タイヒミュラー論は、

ある時は「同じものを違うもの」と見なし、
ある時は「同じものを同じもの」と見なす

という柔軟性を持った新しい真理になり得ると言われています。

6.所感

ABC予想やフェルマーの最終定理など、有名だけどあまり知らない、だけど知るのが難しい事がたくさんあります。

たまたま観ることになった、NHKの番組でABC予想の大枠を知ることができました。

NHKは最近面白い番組が多い印象で、複雑怪奇なABC予想をどうやったら、視聴者が最後まで楽しく観てくれるか、という想いを突き詰めてくれている感じがしました。

知らないことを知る=勉強や学習の醍醐味だと思っています。
知らないことを知らないと自覚し、楽しみながら知ろうとする姿勢は大人になってから日に日に強くなっています。

人間いくつになっても学習だな、とありきたりな答えを改めて認識する良い機会になりました。

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