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大阪市・鯨死骸海上運搬処理業務委託契約【勧告】

1. 事案の概要

大阪市は、2023年3月31日に鯨死骸の海上運搬処理業務を委託する契約を締結しました。この契約は、鯨の死骸を大阪港から紀伊水道沖に曳航し、海洋沈下による処理を行うことを目的としています。請求人は、この契約が違法かつ無効であり、契約に基づいて行われた支出が大阪市に損害を与えていると主張しました。主な理由は、地方自治法に基づく随意契約の要件を満たしていないこと、契約書が当初作成されず、見積書も他業者から徴取されていない点にある。

2. 請求人の主張

請求人の主張は以下の通りです:

  • 本件契約には地方自治法施行令第167条の2第1項第5号に定める随意契約理由がなく、地方自治法第234条第2項に違反している。

  • 契約書を当初作成せずに業務を委託したことは、大阪市契約規則の趣旨に反している。

  • 他業者から見積書を徴取せずに契約を締結したことは、大阪市契約規則第17条の3に違反している。

  • 仮に本件契約が有効であったとしても、契約金額が不当に高額であり、大阪市に損害をもたらしているため、契約金額の差額について大阪市は損害を被っている。

3. 滋賀県の反論

大阪市は、以下の点を主張しました:

  • 鯨の腐敗が進行しており、処理のリミットが2023年1月18日であったため、緊急性があり随意契約に至ったことは不合理ではない。

  • 本件契約に関する緊急業務委託施工の指示書及び請書は、災害時における契約事務ガイドラインに準じており、地方自治法施行令に基づく随意契約として正当である。

  • 契約金額については、積算根拠として業務委託設計書やその根拠資料を基に算出され、正当な金額であると説明しています。

4. 監査委員の監査結果

監査委員の監査結果は以下の通りです:

  • 請求人の主張には一定の理由が認められるが、契約の無効や取消事由は認められない。

  • 大阪市契約規則に違反する点があるものの、契約自体は地方自治法の随意契約の要件を満たしているため、法的には無効ではない。

  • 業者選定や契約金額の妥当性について、多くの疑義が残るため、第三者機関を通じて詳細な再調査を行うことが必要である。

  • 本件契約に関与した職員に対する損害賠償責任についても、詳細な事実確認が必要であり、現時点での認定は困難である。

監査結果に基づき、大阪市長に対して以下の勧告が行われました:

  1. 当監査で明らかになった契約手続、契約金額の積算根拠等の疑義について、第三者機関を通じて詳細な再調査を行い、積算価格やその根拠を客観的に検証可能なものとすること。

  2. 契約金額が不適正であると認められた場合、関係職員への損害賠償請求を行うなど適切な措置を講じること。

https://www.city.osaka.lg.jp/gyouseiiinkai/cmsfiles/contents/0000430/430507/240426gaiyo.pdf