昔に海外で苦闘した日本人を知る本 7タイトル

海外駐在(や海外事業の仕事を担当)になった時、他の人はどうしたんだろう、と気になることありませんか? 海外で仕事をすることはそんなに特殊技能が求められることではないのですが、コツのようなものはあります。それを知る方法には、
 ・社内経験者の声を聞く
 ・ネットで情報を集める
などいくつも方法あると思いますが、もう一つお勧めの有効な方法として、
 ・過去に海外に飛び出していた日本人の記録を読む
という方法があります。本の良い所は、書かれた体験を持ち運びでき、いつでも読み返すことができること。

今回は、今まで読んだ本のうち江戸時代から戦後にかけて海外で苦労した人々の本を紹介します。
 ・海外に飛び出して、外国人と付き合っていくこととは
 ・今より制限強い環境でタフに生きる姿
 ・今と過去で違うところと共通すること
こんなことが、今後海外駐在で海外で生活する日本人に示唆を与えてくれます。今すぐ読めなくてもいいと思います。海外赴任する時の荷物に忍ばせて、海外駐在を始めてから迷ったり悩んだりしたときに開くのも良いと思います。

吉村昭「大黒屋光太夫(上下)」

大黒屋光太夫は教科書にも出てくる有名人ですね。18世紀後半の江戸時代、難破でアリューシャンに漂着、その後約10年かけて日本へ戻った人物です。光太夫関係では、井上靖「おろしや国酔夢譚」が有名ですが、こちらはその後発見された関係者の帰国後のいくつもの告白録を踏まえ、より人間味あふれる内容になっています。
読みどころは、何と言っても異国ロシアで光太夫一行の帰国に尽力するロシア人ラクスマンとの友情。海外に生きる外国人って現地人に助けられるんだよねとしみじみ感じるし、それを引き寄せられる振る舞いの人間でいたいと思わせます

鈴木明「維新前夜―スフィンクスと34人のサムライ」

ちょんまげの侍とスフィンクス。奇妙な組み合わせですが、明治維新前に江戸幕府がヨーロッパへ派遣していた外交団の足取りを、記録に基づいて詳しく書き起こした小説風ドキュメンタリーです。好奇心の強さや柔軟性が、未知の世界への適応に影響していることが良くわかりますし、海外在住に悩む人にとっては150年前のお侍さんも同じような悩みを持っていたのかなぁと、妙に勇気づけられたりもします。

幣原喜重郎「外交五十年」

戦前、幣原外交と呼ばれる国際協調外交を繰り広げ、戦後は新憲法を導入した外交官・政治家幣原喜重郎の回顧録。海外駐在って、意見や文化が異なる相手への理解活動が基本にあると思っている自分にとって、国家間の外交の最前線で協調外交を実現していた人の言葉の数々は大変参考になりました。

清沢冽「暗黒日記」

戦前から戦中にかけて、自由主義を貫いたジャーナリストの日記。もともとキリスト教の教育を受け、渡米、ジャーナリストとして名をあげ帰国後も活動していましたが、軍国主義の激化の中で言論活動を妨げられていました。そういった中で密かに記された、日本と米国の比較や日本を俯瞰して見つめる視線は今でも海外と仕事する日本人の心に刺さる指摘に溢れています。

山崎豊子「大地の子」

中国残留孤児、陸一心が主人公の大河小説です。今はほとんど歴史の知識になってしまいましたが、自分が子供の頃(昭和50年代)は残留孤児の肉親捜しの訪日団が毎年ニュースになっていました。日本人ということだけで辛い境遇に置かれる一心。でも、出自に関係無く温かく支える周囲の人々。国籍なんて関係ないんだという希望、外国人と付き合う時に大事なこと、人として大切なことを感じることができます。


山崎豊子「二つの祖国」

これも山崎豊子作品です。こちらは日系アメリカ人が主人公。「大地の子」同様戦争に翻弄される日本人の話ではありますが「大地の子」よりもヘビーですので、例えば海外で孤独になっている時には読まない方が良いです。

終わりに

小説、ドキュメンタリー、回顧録、日記いろいろバラエティに富んでいます。正直、HowTo本のように1時間や2時間でさっくり軽く読める本ではありませんが、じっくり読むだけの価値がある本ばかりです。海外駐在すると日本にいる時よりも時間ができることもありますので、そういった機会を使ってチャレンジする本として、海外駐在の荷物に入れていってはいかがでしょうか?

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