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知られざるレンズを訪ねて(3)ーー「9枚玉の伝説、あるいはRマウントの至宝について」

Leica SL series x Leitz Summicron-R 35mm/f2

こんにちは、氏家(@yasu42 )です。

前回、前々回と好評だった、オールドレンズ作例レビュー企画「知られざるレンズを訪ねて」、久々の復活です。
以前のアーカイブはこちらからどうぞ。

今回の主役はSummicron-R 35mm/f2 初期型。
ライカの一眼レフシステムであるRシリーズ(そういうシステムがあったんです)に供給された35mmレンズですね。
通称、9枚玉。

leica wikiより引用

「Mレンズじゃないの?」
「9枚玉? 8枚玉じゃなくて?」

そう思うのも無理はない。

Summicronの35mmといえばライカM型を思い浮かべる方が大半でしょう。

  • 伝説とも言われ高騰を続ける8枚玉

  • 独特の描写でファンが多い7枚玉

  • しみじみとした優秀さで通を唸らせる6枚玉

いずれも名玉であり、今でも高い人気を誇ります。
そのコンパクトさと描写で「SummicronといえばM型の35mm!」となっているのも事実でしょう。

しかし私はあえて言いたい。
Summicron-R 35mm/f2、その初期型こそが至高だと。
M型、R型を通してライカレンズでも有数の名玉だと。

まずは一枚ご覧ください。

Leica SL(Typ 601)+Summicron-R 35mm/f2

とにかく光と影の描きわけが素晴らしいのひとこと。
みっちりとした密度を感じさせる描写をしてくれます。
それでいながら重すぎず、まろやかなのはさすがライカというべきでしょう。

続けて作例を見ていきます。

【作例】

Leica SL(Typ 601)+Summicron-R 35mm/f2

みんな大好き国立新美術館にて。
拡大するとわかりますが、隅々まできっちりと写っています。
Summicronらしく解像性能は申し分がない。
ただのポヤポヤレンズではありません。

Leica SL(Typ 601)+Summicron-R 35mm/f2
Leica SL(Typ 601)+Summicron-R 35mm/f2

同じく国立新美術館で2枚ほど。
実に立体感のある描写です。
逆光性能は時代なりですが、屋内ならほぼ問題になりませんね。

Leica SL(Typ 601)+Summicron-R 35mm/f2

さすがに直射日光には弱いです。
こればかりは仕方ないところ。

Leica SL(Typ 601)+Summicron-R 35mm/f2

光の具合によってはどこか懐かしい絵になりますね。

Leica SL2-S+Summicron-R 35mm/f2

やはり屋内での撮影で真価を発揮するように思います。
特に窓越しの光での描写は見事のひとこと。

Leica SL2-S+Summicron-R 35mm/f2

私見では「透明感がありながら質感を失わない」レンズです。
よく写るだけではなく、エモいだけではなく、その二つを兼ね備えているといえます。

Leica SL2-S+Summicron-R 35mm/f2

ポートレートにも向いています。
基本的な性能が良く、妙な歪みもないので実に扱いやすい。

なお、開放近辺ではそれなりに周辺光量落ちします。
ここは好みではありますが、私としては歓迎したいところ。
どうしてもイヤだ! という方は1段絞れば改善されますので、試してみてくださいね。

【機材スペック】

機材スペックは以下の通り

製造:1972年〜1976年
マウント:ライカRマウント
口径比:1:2
最小絞り:F16
最短撮影距離:0.3m
フィルター径:シリーズVII

一見すると平凡なスペックです。
ヨドバシカメラに並んでいる「お手頃でよく写る」35mmレンズかなと思うかもしれません。
小型軽量な今時のレンズをイメージする方も多いでしょう。

しかし、実際に触ってみるとそのイメージは一変します。

とにかくデカい、重い。
35mmで開放f2とは思えないボリュームです。
手に持った時の「ずしり」とした重みは圧倒的です。
ガラスの塊。そう呼ぶほかない。

ボリュームありすぎる

そもそも重量510gというのがおかしい。
スペックの割にどれだけ重いかというと

Summicron-R 35mm/f2 510g
Sigma 35mm F1.4 DG HSM Art 665g〜734g

なんですよ。
つまり、あのデカくて重いSigma 35mm F1.4 DG HSM Artと100gほどしか変わらないわけです。
カナダライツの気合いの入れようがうかがえます。

レンズ構成は7群9枚のレトロフォーカスタイプ。
あまりにも豪勢すぎて、これまた開放f2の設計ではない。

1970年代の製造ということを考えると、もう少し明るくできたはず。
ライカはもともと「もっと明るく出来る設計だけどあえて暗くして性能あげたよ」というレンズを好むところがあり、その一環なのかもしれません。

いずれにせよ、超おすすめのレンズであることは間違いありません。
ここ2〜3年で高騰著しく、今後も人気が上がることは間違いないでしょう。

色々な意味で今のうちに手に入れておくべきレンズだと思います。
マストバイ!

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