このオールドレンズがすごい! "Som Berthiot Flor 50mm f3.5"
Som Berthiot Flor 50mm f3.5。
聞き慣れない名を持つこのレンズは、「幻のような絵を描いてくれる」一本です。
どういう意味だ、と思いましたか?
論より証拠、まずは作例を見てください。
明らかに今時のレンズとは異なる描写です。
明るい部分がにじみ、暗い部分も浮いている。
周辺は落ち込み、全体としてふわっと柔らかい。
それでいながら「崩れた」感じはない。いわば、絵としてちゃんと成立している。
今時のレンズではこうはなりません。
もっとくっきりはっきりと写ります。文字通り「真を写す」かのように。
今では失われた表現がそのまま残っている。
これこそオールドレンズの魅力でしょう。
本日はこのFlor 50mm f3.5について紹介します。
1:どういうレンズなの?
Som Berthiot(以下ベルチオ)はフランスの光学メーカー。
1838年(!)創設の会社を源流とし、1964年の合併に至るまで多くの映画用レンズ、カメラ用レンズを生み出しました。
フランスではかのアンジェニューと並ぶ名門といえます。
Flor50/3.5はベルチオ製レンズではもっとも良く見られるもの。
いくつかバリエーションがあるようですが、今回はLynx IIというカメラから取り出した形になりますね。
製造は1945〜1950年と推定されます。
取り出す、といっても無理矢理にではありません。
壊れたり修理不可能だったりするカメラからレンズだけ再利用しているわけです。そこはお間違いなく。
買った当初はレンズが剥き出しだったので、M42マウントに改造してもらいました。
ヘリコイドつきのアダプターに装着し、ソニーα7IIIで使っています。
2:どんな描写をするの?
絹のような描写。
そう表現するのがもっとも適切でしょう。
光の当たった部分は柔らかくにじみ、それでいながら白く飛んでしまうことがない。
暗い部分はゆったりと浮き上がり、確かな質感を残す。
軟調のーー言ってみれば「じっとりした写り」をするんです。
爽やかな青空ではなく、曇り空で気怠そうにうつむく。
そんな絵が似合うレンズですね。
私見ではやはり、近景〜中景のポートレートに向きます。
特に窓から入る光を使ったときの柔らかさは特筆もの。
柔らかいのにちゃんと解像するのもうれしい。ピントがあわずにぽやぽやしているだけとはまったく違います。
さすがに逆光や直射光には弱いので、そこだけはご注意を。
こんな風になります。
3:どうやって使うの?
最初に述べたように、基本は改造品となります。
ライカマウントやM42マウントに改造されたものを買うことになるでしょう。
かつては多く出回っていたようですが、最近はさすがに見なくなりました。
なので、お手持ちのカメラにどうつけるかはマウント次第。
このあたりは以前書いた「これだけでわかる! オールドレンズのはじめかた」を参考にしてください。
なにせ古いレンズのうえ、フランスという独自仕様が多い国。
フィルターやフードをつけるのに困ることも多いと思います。
こればかりは試行錯誤しかないですね。
私の個体はハクバの30mmフィルターがぴったりでした。
出来れば買う前に、「フィルターやフードはどれつければいい?」と尋ねてみてください。
4:作例
ポートレートおよびスナップでの作例を見ていきましょう。
<ポートレート>
(Model: ToMeto)
<スナップ>
描写の傾向はおわかりいただけると思います。
5:まとめ
オールドレンズ、Som Berthiot Flor 50mm f3.5についてまとめると以下の通り。
・基本は改造品
・描写は柔らかく、室内撮影向き
・現行レンズとは違う、幻想的な絵を生み出せる
・特にポートレートにはおすすめ
こんなところですね。
メジャーなレンズとはいえず情報も少ないですが、それだけに使いこなす楽しさがあります。
あなたも是非チャンレジしてみてくださいね。
では、今回はこのあたりで。
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