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スポーツ業界で経営者を育てたい

「スポーツじゃご飯が食べれない」

日本のスポーツ業界で未だによく聞く言葉です。

もちろん、お金のあるスポーツ関係団体も存在します。

しかしそれは殆どの場合、資金潤沢な親会社を持ちエンターテイメント性を活かせるプロスポーツ。もしくはスポーツ用品を扱うメーカーやアパレルブランドの話。

スポーツという純粋なコンテンツで稼いでいる企業・団体は極めて少ないです。

特に「稼いでいる」の定義を、「社員の報酬」や「会社の規模」に設定すれば、日本中を探しても一握りしか存在しないのではないでしょうか。(正確に調べたことは無いですが)

今回はそんなスポーツ業界の経営について。

スポーツ業界から将来優秀な経営者がたくさん輩出されることを願って、「何故スポーツ業界は稼げないのか?」というテーマで考察していきたいと思います。


儲ける目的がそもそも経営者マインドではない

スポーツ業界で起業する人は、非常に利他的な素晴らしいビジョンを持った人が多くいます。

世界で戦える選手を育成したい

この競技を世に広めたい(普及させたい)」

お世話になったこの競技に恩返しをしたい

こういった使命感や目的意識自体は一般企業の経営者の皆さんと比べても遜色なく、エネルギッシュで魅力を感じます。

しかし「何で稼ぐのかというマネタイズ能力は圧倒的に不足しています。

特に普及を担う事業になると「なるべく安価にして人を集めよう」という意識が働き、更にまわりも同様の考えのスポーツ団体ばかりなので、顧客も「スポーツはお金がかからない」が常識になってしまうという悪循環・・・

そもそも「競技の普及や育成、向上」という投資要素が強い目的を優先してしまうので、自身の報酬が少なくても頑張れるし、儲けてもそれを丸々投資してしまいます。

そういった活動を否定する気は無いのですが、一般的な経営目線で見ると資金運用のバランスが悪すぎるんです。

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経営がうまくいくと叩かれる

スポーツは儲からない。

これは結果論というよりただのイメージです。

実際はやりがいも収益(報酬)も伸びしろのある、可能性無限大なビジネスだと私は思っています。

しかし、その「スポーツは儲からない」というイメージが強すぎて、もう儲けてはいけないという外圧まで存在します。

年々この圧力は弱くなっていると感じますが、儲けると叩かれるという事実は今でも確実にあります。

これは日本のスポーツが少年団や部活という形で普及していった歴史によるもので、下記の「スポーツ少年団の未来」で詳しく書いてます。

しかし実際には教育だって「お金がかからない」ものだったはずなのに、近年は塾に高額な月謝を払うことがスタンダードになっています。

要するに「その価値がある」と思えば、人は何にだって対価を支払うんです。

つまり、スポーツのポテンシャルを最大限引き出して商品化し、それを売れる人材や仕組みを育てれば、スポーツでもビジネスは可能だということ。

個人的には外圧以上に「経営者としてのスキル不足」が課題であると感じています。

経営を学んだり営業を育てる意識が低い

社員やスタッフ教育にも課題があるように感じます。

私の知る限りですが、「選手のため」「応援してくれている人のため」「その業界の未来・普及のため」。そういった教育は現場でしっかりと行われているイメージがあります。(口伝や背中の教育が多そうですが)

しかし「マネジメント」や「経営学」といった教育をスタッフに施している団体や企業はあまり見かけません。

特に問題なのは「選手としての実績が組織内のヒエラルキーに大きく影響を与えること。「競技実績は無いけれど人格や経営センスに秀でている」タイプのスタッフが、なかなか出世できない現実があることです。

そこに出身地や出身大学の派閥まで絡まり始めれば、経営者として必要な能力を学ぼうとする風土は産まれません。

乱暴に言うと、儲けられない団体は経営の常識もイロハも分かっていない人間が会社の中枢を担っていることが多いのです。

逆にマネジメントや営業スキルの研修、広報戦略や競合分析(いわゆるマーケティング)に時間を割いている企業や団体は、スポーツビジネスを生業にしながら着実に事業を拡大したり、スタッフの定着率も高い印象です。

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どうやって経営者を育てるか

ではどうやってスポーツ業界で経営者を育てるのか。

これはもう、外と繋がりを増やし、素直に愚直に学ぶしかありません。

インターネットやSNSが普及したおかげで、交流や情報収集には苦労しない時代です。


①業界を超えた情報収集から学ぶこと

 基本的にスポーツに人生を捧げる方たちは勤勉な人が多いです。

 しかしどうしても競技や指導、トレーニングの学びに偏り、経営や運営、組織マネジメントに関する情報収集に時間をまわせていません。


②業界を超えた交流を積極的にすること

 スポーツ業界内の交流だけでは経営は学べません。教職を中心とした公務員や、本職を別に持つボランティアの比率が多すぎるからです。(そもそもお金を稼ぐ意識が低いコミニティ)

 本を読むことも効果的ですが、やはりディスカッションやアウトプットが無いと本当のスキルにはなりません。

 会社と社員をしっかり背負った経営者と「同じ経営者どうし」という意識で交流し、学び続ける必要があります。


③収益事業の規模を度外視した投資をしないこと

 分相応という言葉があります。しっかり経営を学び、投資できるキャッシュ量を見極める必要があります。

 また、収益事業への投資を怠り、社員に十分な報酬を与えず自分の想い(競技環境)にばかり投資していると、事業や組織・人材の成長が見込めず問題が起き、結果として競技環境すら維持できなくなります。
 よく見るのは『自分はこんなに頑張っているのに』と、経営者本人の課題と向き合えていない姿です。


④スタッフの働く環境や報酬を「やりがい」でごまかさないこと

 夢や目標は大切です。

 しかしそこに理念や計画が無いと、スタッフは付いてきません。

 組織の理念と、スタッフの夢や目標、生きがいを繋げることができれば、チームとしての最大出力を上げることができます。
 その力を収益事業に活かし、働く環境を整え、スタッフの生活に必要な報酬(もしくは副業や兼業できる余地)を与える。

 情熱だけでは人は短期間しか付いてきません。


⑤企業や法人である以上、トップは経営者であると自覚すること

 企業や法人はお金を血液に動いています。

 その組織のトップが、スタッフの給与や福利厚生、業務の合理化や人材育成よりも自分の夢への投資を優先すれば、間違いなく組織は崩壊します。

 大きな組織になれば社長がカリスマで、社長以外にCEOやCOO、CFOが経営面の実権を握っている場合もありますが、基本的にはトップが経営の責任者です。

 誰よりも経営学やマネジメントを学ぶ必要があります。


 最後にまとめると、これらの課題は全てスポーツビジネス業界の伸びしろでしかありません。

 新型コロナによる混乱で、メイン事業一本に頼ることや自転車操業の怖さを思い知ったはず。

 今こそ経営学を学び、経営力によりスポーツ業界を進化させる時。

 そんなスポーツ業界の未来を想うと、ワクワクしますね。

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