見出し画像

リフティングの「コツ」と「実戦への活かし方」

自分自身は指導者として、「リフティングは全員ができるようになろう」という想いで指導してきました。

しかしそれはトレーニング中に長い時間を割くのではなく、あくまで自主練習の一つとして「お家でできるようになってきてね」という位置づけで、最低限のコツを教えた上で目標を共有し、達成できたら一緒に喜んであげるという関わり方をしていました。

今回、改めてリフティングを取り上げたのは、最近SNS上で「リフティングでサッカーは上手くなるか」という議論を目にしたことと、自分の息子がリフティングの目標に向かって頑張る姿を見て、「指導者として考えるリフティング」を文章にまとめてみたくなったからです。

あくまで一人の指導者としての経験則であり個人的な見解ではありますが、サッカー指導に携わる方やサッカーに打ち込むお子さんを持つ保護者の皆さんの参考になれば幸いです。

(初心者から小学生高学年程度のレベルの内容です)

画像1

Ⅰ:コツをつかむまでの三原則

一言でリフティングと言っても様々ありますので、今回はあくまでスタンダードなインステップタッチを使ったリフティングについて書きます。

まず10回や30回程度を目指すには、重要な三原則があります。

①足首に近いインステップでボールに回転をかけない

当たり前ですが、ボールに回転がかかるとコントロールが難しくなります。

最初はボールに回転がかからないようにすることが大切です。

インステップでボールに回転をかけないタッチをするには、足の甲の中でも足首寄りでタッチすること。(足は先に行くほど細くなるため)

②高さを安定させる

タッチしたボールが高く上がると、次のタッチが難しくなります。

また、最初は利き足のみで繰り返しますので、低すぎると次のタッチが間に合いません。

身長にもよりますが、小学生低学年であれば、自身の腰から顔程度の高さで安定するようにしましょう。

③足で追うのではなく体で追う

リフティングが続かない子は「タッチが安定しない」のと「軸足が動かない」のが原因です。

ボールが左右前後にズレた時、軸足の位置を変えずに足でボールを追うと、ボールに触れたとしても体勢が崩れていますので正確なタッチは困難です。

ボールの落下点まで素早く体を運び、下の写真のような安定した姿勢で「蹴り足をボールの落下点に準備する」必要があります。

画像2

Ⅱ:「サッカーを始めたばかり」「運動能力が課題」という子どもの対応

そもそもリフティングどころではない段階のお子さんもいるでしょう。

ボールを上に蹴り上げる感覚や、落ちてくるボールの位置を予測する能力が不足している場合。高く上がったボールに恐怖を感じる子もいますし、落ちるボールの重さに足の筋力が不足している場合も。

子どもの能力や成長には個人差がありますので、周りと比較したり理想を求め過ぎず、まずはボールに触るのが楽しいという気持ちになることを優先してあげましょう。

一般的にはワンバウンドリフティングから入ることをお勧めしますが、それすらも難しいと感じてしまえば続きません。

手に持ったボールを上に投げたり、バウンドさせたり、両手でボールを落とさないようにパス交換したり。

まずは「楽しみながらできることを増やしていく」ことが重要です。


Ⅲ:モチベーションの保ち方

リフティングを身に付けたければ、最終的に「練習量」がものを言います。

多少効率の悪い練習方法でも、量をこなせば殆どの子どもができるようになるものです。

しかし、チーム練習でリフティングにそこまで時間を割くことは難しいですし、自主練習で取り組ませるにはモチベーションが不可欠です。

お勧めのモチベーション維持の方法は2つ。

①段階的な目標設定

まず「定期的に達成できる目標」が大切です。

10回もできない子に、いきなり「目標50回」ではモチベーションは保てません。

「まずは5回」「1日15分を1週間」「3チャレンジで合計10回」のように、達成できる目標を小刻みに設定することでモチベーションを保ちやすくなります。

また、条件や環境も大切。

例えば「リフトアップ無しで手から」「リフトアップをワンバウンドさせてから」と最初のハードルを低くすることで成功体験を起こしやすくしたり、ボールの空気を少し抜いたリフティング用ボールを用意してあげるのも有りでしょう。

子どもの性格にもよりますが、適度に成功体験を積ませることがモチベーション維持の秘訣です。

②成功報酬

成功報酬を嫌う人もいますが、大人も給与や評価を求めて頑張っている実態はありますよね。

また、成功報酬とは必ずしも物やお金のことだけではありません。

特に小学生であれば「リフティングカードにスタンプが貯まっていく」「クリアした子からゼッケンの番号を選べる」「合計数が多いチームから試合のキックオフ」「回数が多い子から好きなポジションを選べる」「新記録を出したらチーム全員から拍手してもらえる」みたいな報酬で十分。

自分の努力が何らかの形で表現されることで、「努力(成長)すれば認められる」という体験と共に、自己肯定感を育むことに繋がります。

画像3

Ⅳ:リフティングでサッカーは上手くなるか

これについては賛否あると思いますが、私個人の意見を述べるのであれば「やりかたによってはYES」です。

まず、得意な足で永遠と回数記録に臨むようなリフティングであれば、サッカーの試合で求められる技術には繋がりにくいです。

リフティングはあくまでミートポイントを感触として掴むことと、ミスタッチしないように集中力を維持する程度のトレーニング効果しか期待できません。

では、どのようなリフティング練習であれば試合に必要なスキルの習得に繋がるのか。

それは「ミスタッチが頻繁に起きる設定で行うこと」です。

リフティングは上達すればするほど、回数を追求してしまうとミスタッチが少なくなります。

それは「適度な高さでボールがまっすぐ落ちてくる」という試合中に再現されることが殆ど無いシチュエーションでのボールタッチです。

しかしミスタッチがあればバランスは崩れ、難しい体勢や部位でボールを自分の支配下に置く技術が求められます。

その瞬間こそ、リフティングは価値あるトレーニングになるのです。

例えば、リフティングする部位を制限したり、歩きながらリフティングしたり、ボールを高く上げたり。二人で行えるのであれば、サッカーテニスや離れた距離でリフティングするなど工夫の余地が拡がりますね。


Ⅴ:サッカーに繋げるための心がけ

最後にまとめですが、私はリフティングというトレーニングは指導者にとってとても有意義なものだと思っています。

それは「一人で成功体験を積めるトレーニング」だからです。

特にサッカーを始めたばかりの頃は、まわりのお友達のほうが上手だったり、自分の成長と共にまわりも成長するため、自分の上達に自信を持てなかったりするものです。

しかしリフティングの回数は絶対値です。

練習前や休憩中にリフティングしていた子が、たまたま最高記録が出ると嬉しそうに報告しにきます。

その時の嬉しそうな顔は、まるで試合でゴールを決めたかのよう。

ゴールを決めることは誰でもいつでもできることではないですが、リフティングは全ての子どもに等しく成功体験を与えてくれます。

だからこそ、私は僅かな時間ですがリフティングをトレーニングの中に入れます。

コツを伝えたり、個別にアドバイスしたり、僅かな成長を褒めて「自主練習しよう」という気持ちになるきっかけを与える時間です。

そしてその時、一つだけ全員に条件を出します。

それは「ボールが落ちるまで諦めず食らいつくこと」

これが体幹トレーニングに繋がり、ボールへの執着心に繋がり、難しいボールをコントロールする技術に繋がるからです。

「何回できたか」の報告より、「諦めずに体を投げ出したワンタッチ」を絶賛します。


リフティングを含め「これをやれば絶対にサッカーが上手くなる」ような練習メニューはありません。

全ては「選手の理解」「取り組む姿勢」次第。

少しでも皆さんのまわりの「リフティングが苦手な子」のお役に立てれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?