NZのアウトドア文化から、日本のアウトドア業界を考える
5週にわたって書かせて頂いた、ニュージーランドアウトドアトリップ編も今回で最終章です。ここまでお付き合い頂いた方、本当にありがとうございました。
最後に、なぜNZのアウトドア文化は魅力的なのか、僕がNZから帰ってきて考えたこと、そして日本のアウトドア業界への想いをまとめておきたいと思います。
NZと日本の共通点、四季があり自然豊かな島国である
まず、自然環境の共通点についてです。
NZは南北に細長い島国で、四季があります。海岸線は全長15,000㎞を誇り、広大な砂浜や荒々しいリアス式海岸など変化に富んだ美しい景色がある。
他にも、活発な地熱活動による湧き出る温泉があったり、降水量が多く山々を河川が浸食しているから、豊かな河川、渓谷美がある。
お気付きの方もいるかと思いますが、この自然の特徴って日本とすごく似ているんです。
【NZの特徴①】観光への取組みがとても進んでいる
次に、NZは国土の約3分の1が、国立公園や自然保護区に指定されており、自然風景が大切に保護されています。また、これらの地域にはたくさんの遊歩道が整備されていて、壮大な景色を眺めながらトレッキングやハイキングを楽しむことができます。
豊かな自然に恵まれているという点では、日本とNZは共通していると言えるのですが、それを大切に保護し、観光資源として整備してきたNZ。日本も取り組んではいるのですが、レベルというか本気度が断然違う。
ちなみに、NZは120年前から政府観光局があり、世界で最も歴史のある公的な観光促進機関だそうです。ここに、二国間のアウトドア文化に大きな差が生じている理由があるような気がしています。
【NZの特徴②】日本より、圧倒的に人口密度が低い
次に、日本とNZを比べる上で圧倒的な違いがある部分あります。これが、人口密度。人口密度は、限られた自然環境・自然現象を楽しむアウトドアアクティビティにとって、切っても切れない関係にあると思います。
NZの人口密度は、約18人/㎢。
日本の人口密度は、約347人/㎢。
NZは、日本に比べて人口密度が圧倒的に低いのです。
では、日本の中で一番人口密度が低いエリアである北海道はというと、人口密度は約69人/㎢。
日本の中で、ずば抜けて面積が広い北海道でも、NZより人口密度が高い。
これは、NZは一人当たりが楽しめる自然の面積が広いと言えますし、人口密度が少ないと、その分、住む場所や生活の為に自然を壊す必要性が低いということなので、手付かずの自然が多いということにもなります。
【NZの特徴③】アウトドアを楽しむための整備、保全が進んでいる
アウトドア先進国であり観光立国であるNZは、日本よりも人口に対する海外からの旅行者の割合が多いです。
ニュージーランドは人口わずか 494 万人の国ですが、年間 388 万人以上(うち観光主目的が200 万人)が観光地を訪れます。年間で人口の78%ほどの外国人が来る。(日本は同約25%、どちらもコロナ前の数字)
この数字だけ見ると、各地の有名なアウトドアフィールドでの混雑が起こっていても良さそうですが、人口が多いオークランド周辺を離れると有名なフィールドでも混雑とは無縁のアウトドアが楽しめる。
これは、国の政策として自然保護に力を入れ、トレイルや遊歩道の整備、トイレの設置やごみの回収、たくさんのキャンプ場などを作っているからだと思います。
要は、自国の人口よりもはるかに多いアウトドア愛好家を受け入れるフィールドがあり、キャパシティがある。
その整備を行政・民間企業が協力して取り組んでいる。アウトドア需要に対して、フィールドの整備が十分追い付いているという状況ではないかと思います。
【NZの特徴④】アウトドアで得られる豊かさを皆が理解している
次に、NZで生活する中で、僕が肌で感じたことを書かせて頂きます。NZのいくつかの地域でアウトドアして僕が感じたのは、
①アウトドアがライフスタイルとして定着していて、人生を楽しんでいる人が多いこと
②アウトドアビジターに対してもオープンな雰囲気があること
です。現地の人達と話したりしても、本当にみんなニコニコしているし、和気あいあいとアウトドアを楽しもうという雰囲気が伝わってくる。
この国は「NZを最も住みやすい国にする」という理念を政府が掲げているらしいのですが、それに多くの国民が理解しているし、賛同しているのだと思います。
僕がカヤックやサーフィン、キャンプする中で見たフィールド、施設、人々それぞれにおいて、政府、国民、企業がバランスを取りながらアウトドアで楽しむことを大前提にフィールドの整備や施設利用をしているのだろうなということを、肌感覚として、実感することができました。
僕が過ごしたカイツナ川のカーパークでの、2,3日おきのゴミ収集に加え、綺麗な管理されたトイレがあることや、全く知らない日本人の僕にもカヤックに行くから一緒に来ないかと誘ってくれる現地のカヤッカー、ホリデーパークを始めとするアウトドア施設の充実、海や川の各フィールドで出会った日常的にアウトドアアクティビティを楽しむ国民のライフスタイル。
これはニュージーランドで過ごす人々が、アウトドアで得られる豊かさや素晴らしさを理解していて、その自然環境を守り、豊かな生活を両立させながら暮らすことが重要だという意識が、国の隅々まで浸透しているからこそなんだろうと、生活してみて感じました。
NZのアウトドア文化から、日本のアウトドア業界を考える
これまで書いてきたような、NZの人々の,より自然なアウトドアとの関わり方を目のあたりにし、日本のアウトドアシーンを振り返ってみると、NZと日本ではアウトドアの楽しみ方に、少し違いがあることに気がつきました。
日本はキャンプブームということもあり、キャンプをアウトドアの最終目的に設定している方も多く、キャンプ道具へのこだわりや、自分のテントサイトの魅せ方に注力する方が多い気がします。
もちろん、アウトドアの楽しみ方は人それぞれですし、どんな楽しみ方があってもいいと思います。(周囲に迷惑を掛けたり、むやみに自然を壊したりしなければ)
でもよければ、道具や見た目にこだわることは一旦忘れ、目の前にある自然をもっと満喫して欲しいと思うのです。自分なりの方法で良いので、是非じっくりと自然と向き合ってみてください。
そして、もし余裕があれば、次のステップとして、アウトドアアクティビティにもチャレンジにしてみて欲しいのです。
アウトドアアクティビティを行う魅力は、山を登る、川を下る、海を渡るなどの行為の中で、人の手が加わっていない自然に立ち入り、身体全体で自然の雄大さやパワーを感じ、素晴らしい景色を眺めることで、自分が成長できたり、一緒にいる仲間や身近な人達を大切に思うことができること。
自然な中での経験を通じて、自分が成長できたり、人との絆が深まる。そう思うからこそ、アウトドアは人生を豊かにすることができると感じています。
日本には各地域それぞれに、海山川など豊かな自然があり、四季があることによりそれぞれ表情が変わります。
そんな素晴らしい自然環境を持つ日本だからこそ、アウトドアのより深い魅力に気付けるだけで、よりたくさんの方が、アウトドアを通じて人生を豊かにできると思っています。
~~~
以上でNZアウトドアトリップ編を完結とします。ここに書いたことを、色々な方法で自分の周りの方達に伝えていくことが、今後の僕のテーマとなりそうです。これから、じっくり方法を考えていきたいと思っています。
最後の最後までお付き合い頂いた方々、本当にありがとうございました。
(表紙,1枚目,最後の写真:Yuya Nojiri)
以下は、今回の記事を書く為に、NZの情報を調べていた時に見つけた記事です。NZの文化についてわかりやすく書いてあるので、よかったら読んでみてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?