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『推し、燃ゆ』のプロット分析


芥川賞受賞作『推し、燃ゆ』の小説を、ストーリーの骨組みになるプロット(構造)をもと分析して見たいです。

プロットとはストーリーの要約です。映画や演劇の世界では非常に重要視されています。ストーリー上の重要な出来事のまとまりを分析することで、物語の構造や仕掛けなどを把握することができます。とくにこれから物語を作りたいという人には参考になると思います。

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※プロット分析の自分にとっての備忘録です。完全にネタバレになりますがご注意ください。映画を見て原作に興味をもって読むように、このストーリのプロット構成を読んで、この作品の魅力をより知って頂けたらと思います。

著者について

宇佐見りん

1999年静岡県生まれ、神奈川県育ち。現在大学生。2019年、『かか』で第五六回文藝賞を受賞、三島由紀夫賞候補となりました。

構成について

原稿用紙139枚の作品。
全部で7章と23の意味段落から構成されている。


1章 冒頭

1-1 物語のきっかけ

「推しが燃えた」という書き出しとともに始まる。高校の同級生とアイドルの追いかけをしている主人公の描写。

1-2 テーマの提示

生理になり学校のプールを見学するシーン、で始める。このプールのシーンが印象的。前作の『かか』でも生理の血のことを金魚の表現が印象的。
保健室登校で「病院の診断」というワードが出る。
その後は「推し」についての説明が続く。緑色のピーターパンを見たときの真っ先に感じたの痛み。それは高校一年生だった。彼と一体化しようとする。推しを見ると自分の中から正とも負とも言えない感情が湧き上がってくる。ピーター・パンは「大人になりたくない」と口にする。ピーターパンシンドロームのメタファーではないか。

1-3 推しについて

昼の一時にインターネット上出た推しの映像。推しがファンを殴ったのでマスコミから質問攻めにあうシーン。それと対比される映像を見ている主人公のシーン。主人公は教室でこの映像を見ながら、プール後の塩素の匂いを感じている。

その後推しとの関わり方についての説明が入る。
すべてを信仰する人、
良し悪しの判断をする人
彼に興味はあるが作品にはないひと
作品だけ興味がある人
などなど

そのなかでも主人公は、作品も人も解釈する。推しの見る世界を見たいようだった。その後、押しについてのブログが書かれ、主人公が生き生きと推しについて語っている。

1-4 推しを応援している自分と学校での自分の対比

推し初めてから1年経つ。ファンミーティングでの回答が予想できるようになった。推しとのSNSでのある絡みをキッカケにガチ勢として評価されるように。
チャイムの音で教室のシーンに戻る。只野という地理教師。レポートを提出日だったが、なにも用意していなかった。学校で生きていけない主人公が描かれる。

2章 家族について

2-1 ブログで推しを支える決意

ファン向けのブログで炎上騒動があっても、推しを支えていくことの決意表明。

2-2 主人公の姉が登場

車に揺られて、姉が登場する。主人公は推し活のために姉からもお金を借りていた。姉は常に母のご機嫌をうかがっている。父の海外転勤に母はついていきたかったが、病気の祖母に残れと言われ日本に残ることに。

2-3 ファンとのSNSでのつながり

車酔いの苦しさは、帰宅したときには収まっていた。
家に帰るとCDが届いていた。CDを何枚も売っていくAKBシステム。投票と同時にSNSでのファン通しでつながる。

2-4 苦行と背骨

新曲が出るたびに、祭壇に飾る。お寺や教会のように。
普段の人の生活は部活やバイトで生活が肉付けされて豊かになっていく。でも主人公は違った。普段の生活は「苦行」だった。推しだけが背骨だった。

3章 バイトや社会について

3-1推しのブログを書く

推しの声で起してくれる目覚まし時計のレビューをブログに書く。

3-2 居酒屋でのバイトの話

バイト先の幸代さんからのシフトの催促。バイト先でろくに仕事が出来ない自分が描かれる。

3-3 バイト先での評判

バイト先でのみんなの会話。「アイドル追いかけして、行き遅れきゃいいけど」と言われる。推しに熱中する主人公は「まじめ」なんだねと声をかけられる。

3-5 家族からの孤立


主人公はまじめとは程遠い。とにかく勉強が出来ない。姉がとても勉強出来る。姉があまりも主人公が勉強できないからと怒りをぶつけて来る。家族からも同情されている。
それでも推し関することだけは出来る。推しがやる分野だけ詳しい。推しとの今までの関係を振り返る。推しを見ようとして家事も放置してばかり。どんどん自分を肉体的に追い込んでいく。

4章 転落の始まり

4-1 留年が現実化

保健室登校の話し。担任との話し。そして留年が現実のものになる。

4-2 留年決定と祖母の死

留年が決定する。母には自分に対する理想像があり、そこからずれて留年までしまった主人公をしまったため酷く落ち込んでいた。
突然、祖母が死んだことが伝えられる。

4-3 祖母の死よりも推しの話をしたい主人公

祖母の遺体が運ばれてくる。でも主人公は一ミリも悲しんでいない。友達の二重瞼手術の話と推しについて話す。海沿いの祖母の家は海の匂いが漂っていた。携帯を開いてひたすら推しのSNSでの話しに没頭する。

4-4 父が登場して自分の将来の話しをする

風呂上がりの居間では家族が自分の就活の話しをしてた。
父との会話で「コンサートには行けるのに仕事には行けないの?」
と痛いことを言われる。
お父さんのSNSを覗き見していたことを思い出し笑いして、母に怒られる。
父は冷静に淡々と話を進める。なんなくこなせる人特有の微笑み。自分には病気で出来ない。
とりあえず姉の助け舟で一人暮らしすることになる。だが同時にバイトをクビになる。

5章 転落後
5-1 一人暮らし

推しのことを考えながら家事をするもの、ポンコツすぎてなにも出来ない。そんななか推しのライブチャットで解散するとを告白される。

コンソメスープを腐らせていく。にわか雨が来たことは気がつくが、外に干した洗濯物までは考えが至らない。どんどんお金がなくなっていく。

謝罪会見のような推しの記者会見の話し。ついに推しの住所を特定出来た。

6章  推しが消えた喪失感

6-1 推しへの愛について

6-2 最後のライブ


ライブのトイレからシーンが始める。
推しの世界が終わり、背骨が消えていく。

7章 ラストの締め

7-1 ブログに感想を書く

7-2 推しの家まで行く

真夜中の海沿いの家の雰囲気の描写。ライブを見続けて気がつけば朝になる。その後散歩に出かける。バスに乗って遠出。誰もいないところで降りる。
ガードレールが途切れて、その先に推しのマンションがある。マンションのベランダではショートボブの女の子が洗濯物を抱えていた。

推しはアイドルではなく人になった。なぜ推しは人を殴ったのか?なぜ私は普通に生活出来ないのか?といろいろと思案する。

帰りのバスを乗り間違え、パスモを落とそうとた。生きていたら老廃物のように溜まっていた。なぜ推しが人を殴ったらのかわからないけど、私は推しと繋がっている。自分の肉体がうっとうしかった。目の前にある綿棒のケースを投げる。綿棒が散らばる。

7-3 ラスト

片付けをし始める。這いつくばっていきる。二足歩行は私に向いてない。身体が重い、綿棒を拾う。(芥川賞の選考では、綿棒は骨を拾う描写というメタファーだと言及される)




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