パーキンソン病の父との会話

私の父親はパーキンソン病を患っている。
病院で診断されてからもう10年は経っている。
薬も、飲み初めて5年間は良く効くが、その後は段々と効き目がなくなっていく。薬も幻覚などの副作用があり、おかしな事を言い出す。

最近は認知も進んできて、耳も遠いので話も通じない。寝ているか食べているかトイレに行くかの日々だ。
トイレも独りではもう行けない。
母親が介護をしているが、かなりの負担だ。
実家は近くはないが、関西圏なので時々帰る。
娘の事は、一応まだ分かっている。
父と話はほとんどできないが、たまに会話が普通に出来る時があってびっくりする。

ある春の日のこと

母親が用事があるとの事で、実家で父の見守りを頼まれた。
トイレに行きたいという。しばらく排便がないと母から聞いていたので、うんこかも知れないなと思う。
父はベット横のポータブルトイレに行きたがったが、掃除が大変なのでトイレまで引きずって連れて行く。

父のトイレは長い。臭いやろうから、換気扇も付けて窓も開ける。
トイレ横で待っていると、
「寒い寒い」と言うので仕方なく窓を閉める・・・

突然父親が話し出した。
「あの時お母さんはどこに行ってたんやろうなあ」
「あれはどこやろうなあ・・・すごく広い所におって・・・」
「お母さんがいなくなってなあ。人に聞いたんやけど、分からんかった」
「どこにおったんやろうなあ」

父はショートステイに行った時の事を話してるらしかった。
私は、ぼけてしまった父親が、施設のスタッフさん達に何度も「お母さんはどこにいるのか」を尋ねている所を想像して不憫になった。

父との時間もこの先いつ終わってしまうか分からない。
出来るだけ会話ができればいいと思う。
祖母と同じで、子供時代や、自分の一番楽しかった時代の話になると反応する。
辻井伸行のピアノ演奏の動画にも反応していた。
音楽は分かるようだ。
次回は父親の若い頃の流行歌でも聴かせてみようと思う。

春日八郎、三橋美智也、島倉千代子辺りだろうか。
今は何でもyoutubeにあるのでありがたい。
古い曲を検索していたら、「憧れのハワイ航路」をBIGINがカバーしているのを見つけた。
ウクレレの前奏が素晴らしく、懐かしい響きでとてもよかった。
父親にも聴かせてみようかなと思った。


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