「裸足」がテーマの文章を書く裸足の人

 パソコンの前に座り込んだとき真っ先に思い浮かぶ言葉が「寒い」、そんな季節に文章を書こうというのが間違いなんだ。


 アスファルトが夏の日差しでちりちりに熱いところを裸足で歩く。飛び出た小石の尖ったのだとしても、熱さと判別つかない。白線を踏んで進むことは子どものお遊び以上に足裏を救う意味を持つ、裸足のときに限るけど。

 とにかく速さが求められるときに、足が降り立つ先に何が落ちてるか気にしている暇なんてない。だから運動会前はグラウンドの大掃除をやる。草を抜き、小石を集め、いたいけな生足を守るのだ。当の生足たちは乗り気でないみたいだけど、かけっこを痛みで終えたりしたら嫌でもやる気を出したくなるよ。

 靴を履いていると自分が五つ指であることを忘れがちだ。忘れすぎて小指は年々縮んでおり、そのうち消滅するかもしれない。だからたびたび自覚を呼び起こすために裸足で泥を踏む。濡れてよく冷えた地面は体重をかけると独特の動きをする。沈むのと盛り上がるのを同時に繰り出すんだ。指と指の間に滑り込んでくる泥の感触で、小指が大きさを取り戻すのを感じる。嬉しくて、もう一度足をあげる。指についてきた泥が落ちて、また踏まれる。泥の潰れた数だけ五つ指になる。

 爪が伸びてくると表面化するリスクがある。この歳になってもサッカーボールをつま先で蹴ってしまう僕にとって、親指の爪は伸びれば伸びるほど死に近づく。鋭くなればなるほど脆くなるなんていえば日本刀みたいで恰好がつくけど、実態は竹光以下。一閃すればへし折れてデバフがかかるユニットを運用したくないよ。


 もっと多彩な表現で裸足をもぐもぐしたいですね。もぐもぐ。

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