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読書日記『侵略少女』(古野まほろ,2022)

中学生の頃から追っかけている古野まほろの最新作。

『終末少女』『征服少女』とともに天国三部作と呼ばれている通り、天国と人間と地獄のものがたり。
もちろん、本格ミステリで、古野まほろ節がゴリゴリだ。だから、予定調和的に女子校で、予定調和的に孤島であり密室で、予定調和的に読者への挑戦状がある。分厚さもいつも通りで、本を開くまでのタメの時間が必要だけれど、読み始めてしまえば貪るように読み進めてしまう。


古野まほろは今作で職業作家を引退すると発表している。
これを知った時、しばらく絶句した。

思い返せば、コーヒーより紅茶派なのも、髪を染める時にチェリーっぽい色を意識するのも、ステンドグラスやキリスト教の美術品に興味を持ったのも、全て古野まほろの影響だ。

色の名前が出てくれば図書館の美術コーナーに座り込んで調べ、宗教画が出てくれば図解・宗教画みたいな本をリクエストし、オペラの一節が出てくれば電子辞書で調べ……本当に沢山のものに触れる機会を作ってもらった。多感な時期に、情報の洪水みたいな古野まほろ作品に触れられて幸運だった。

情報だけではない。古野まほろ作品で徹底して書かれている「人と人の分かり合えなさ」も私の中では大きな部分を占めている。そして、「それでもなお、分かりあうための努力を惜しむな」ということも。

古野まほろ作品と過ごせた青春時代は、何にも代え難い。職業作家引退は寂しいけれど、「絶筆」とまで銘打たれた作品を、衒いもなく楽しめる年齢で読めた悦びは甘受しよう。


天帝シリーズ、セラ黙シリーズ、戦う少女シリーズは買い集めてみようかなあ。



読了日:2023/01/27


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