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読書日記『小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集』(桜庭一樹,2019)

装画はヒグチユウコ。たぶん桜庭一樹を知らずとも、このかわいい装丁に惹かれて手にとっていただろう。

しかし、生憎(?)桜庭一樹が好きだ。特に読書日記は中高生の時にハマり、紹介されている本をノートに書き付け、図書館で借りられるものを見つけては、借り続けた記憶がある。(そういえば、そのノートにもヒグチユウコのイラストを切り抜いて貼っていた。)

この本は読書魔・桜庭一樹の解説、リレー読書日記、書評、対談(道尾秀介、冲方丁、綿矢りさ、辻村深月)を収録している。これまでの読書日記よりも、「本」や「感想」に強くスポットライトが当たっている。読書日記と併せて読むと二倍三倍と面白いかもしれない。


桜庭一樹には、乱読派というか、著者に囚われず読むというイメージがあったので、今回の神林長平へのラブレターみたいな文章を読んで、少し衝撃を受けた。そっか、推し作家、いるんだ……。顔馴染みの近所のおねえさんが、結婚するらしいと聞かされたような、ささやかな衝撃。

しかし、それは桜庭一樹を身近に感じられる出来事でもあった。

いっぱしの読書家を自負していた中高生の時に、桜庭一樹の読書日記を読んで「あ、無理だ。」と思った。桜庭一樹が紹介する本を必死に追いかける一方で、古典や名著と呼ばれる本は好きじゃないし、著者別にコンプリートすることが好きだから守備範囲は狭いし、私は桜庭一樹に追いつけない……と静かに絶望したのだった。

そんな桜庭一樹にも、少女時代に必死で追いかけて、ラブレターちっくな感想を書いちゃうくらいの作家がいたのだ。なんだか嬉しい。

今、私には私なりの本の楽しみ方があり、桜庭一樹には桜庭一樹の楽しみ方があり、どちらにも貴賤はないし、どちらも固有でお互いに真似できるものではない、と考えられるようになった。桜庭一樹は、私にとって読書界の「親」で、私はこの本でようやく「親殺し」「親離れ」ができたのかもしれない。



読了日:2022/12/17

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