野生子

20世紀文化の忘備録。ここでは特にTVドラマ、煌めきの断章。

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20世紀文化の忘備録。ここでは特にTVドラマ、煌めきの断章。

最近の記事

向田邦子×久世光彦=「麗子の足」

「この岸田劉生が描く麗子の像はもちろん複製ですが、これは父の一番好きな絵なのです」 麗子像の好きな紀田家の父(佐藤慶)は肺病でサナトリウムに入院してもう長い。残されたのは、母(加藤治子)、長女礼子(田中裕子)、次女貞子(今井美樹)、三女節子(速水昌未)の女ばかりの四人一家で、父の不在はこのシリーズの定番の家族形態となる。 舞台は昭和10年10月の東京、阿佐ヶ谷。母は医者一族の出であったらしく、一家に出入りする従兄弟の總一郎(永島敏行)は軍医中尉、「麻布のお爺ちゃま」祖父の

    • 向田邦子×久世光彦=「女の人差し指」

      「忍れど 色に出にけり 我戀は 物や思ふと 人の問ふまで」 平兼盛 昭和15年11月。太平洋戦争開戦前年の年の暮れ、百人一首を熱心に暗唱しているのは、菊坂家の次女あき子(洞口依子)である。正月恒例の家族対決を控え、次こそは勝利するぞと励んでいる。そんな子供らしさを残した末っ子が、懐かしい戦前の我が家を回想して語るパターンが、このシリーズ中ここから始まる。 陸軍の軍人だった父は3年前北支で戦死して、残されたのは女ばかりの三人家族。母里子(加藤治子)、長女文子(田中裕子)と言

      • 向田邦子×久世光彦その壱 昭和57年~昭和62年

        「向田邦子新春ドラマ」と銘打って年明け早々きっちり一作(昭和62年のみ三作)約20年間作り続けた久世光彦。放映開始日は昭和57年1月1日。向田邦子が台湾で客死したのが前年8月22日であるから、このシリーズの存在を彼女は知らない。 残された著作を参考に、数名の脚本家達が趣向を凝らし向田風味を散りばめて、 制作・脚本は久世が担当。タイトル字画は彼女が愛した中川一政。ナレーションは黒柳徹子。ノスタルジックなBGMは友情出演も兼ねて小林亜星が手がけた。 他にも森繁久彌、いしだあゆ

      向田邦子×久世光彦=「麗子の足」