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深田萌絵さんは、パナソニック半導体事業売却がF-15やF-35と関わっているかのようにデマを流していますね。

みなさんこんにちは、八洲子です☆
お元気ですか?

今回は、深田萌絵(浅田麻衣子)さんが未だに展開している、パナソニック半導体事業を台湾企業nuvotonに売却した事で、米軍戦闘機のレーダーチップ技術が中国に渡った!!というとんでもないデマについて解説しますね。

もうね、八洲子の部屋第10回で解説済みなんですけどね。


深田萌絵さんの主張をざっとおさらい

深田萌絵さんは、以下のような主張をされています。

台湾nuvoton社へのパナソニック半導体事業売却は外為法違反
TPSCoでパナと合弁しているタワージャズ社(現タワー社)は米国防総省ティア1企業
TPSCoはタワージャズで設計したデュアルユース技術や軍事技術が含まれるチップを生産する。
nuvotonは台湾企業と思われているが、青幇・浙江財閥企業なので、実質中国企業

(以上、2019年12月31日に深田萌絵本人がビジネスジャーナルに寄稿した記事「パナソニックの半導体事業売却、軍事技術が中国に流出する恐れ…日米安保にも波及か」から抜粋)

さらに、つい最近は
F-15やF-35のレーダーチップが、パナソニックの半導体事業がnuvotonへ売却された事が原因で調達が困難になっている

・・・というような話をしているようです。

パナソニック半導体タワーパナソニックセミコンダクターカンパニーのレイダーチップの工場が、そのままPLA中国解放軍のフロント企業、台湾企業なのですけれども、そちらに売却されてしまった。私は技術流出を懸念して何人かの政治家や政府高官などにも話をしたのだけれども、何の審査もされずにそのまま技術は中国へ渡り、あれから2年経ってアメリカも日本も F 15やF 35のレイダーチップの調達が非常に難しい状態になっている。

https://nihonwomamoruhito.blog.fc2.com/blog-entry-240.html

ここからはひとつずつ、深田萌絵さんの話の何がおかしいのかを解説しますね。


・台湾nuvoton社へのパナソニック半導体事業売却は外為法違反?

パナソニック半導体事業譲渡に関するプレスリリースを確認すると、nuvotonへの半導体事業売却は各国・地域の競争法当局その他政府機関の承認取得を前提としている事が記載されています。

3.その他
本契約は、各国・地域の競争法当局その他政府機関の承認取得を前提としております。また、譲渡前事業再編を含む本件譲渡の実行予定日は、当該承認取得およびその他の許認可等に関する手続きにかかる期間を踏まえ大きく異なる可能性があります。

https://www.panasonic.com/jp/corporate/ir/pdf/jn131220.pdf

つまり、外為法含む他各国・地域の競争法当局や政府機関の承認取得をしているので、日本並びに米国等の法律に違反するものはないという事です。
深田萌絵さんは、まったくソースのない話として米国が気づいていないとか言っているんですが、そんなわけないだろ(笑)という事です。

さらに、当たり前ですがタワージャズ社側もプレスリリースを出しているので、そんな軍事機密が他国に渡るような話になっている訳ないんです。

米国政府すら気づいていない事を、深田萌絵さんが気づいてしまった!!!!とでも言いたいんでしょうかね。
自分を過大評価しすぎだと思いますよw


・TPSCoでパナと合弁しているタワージャズ社(現タワー社)は米国防総省ティア1企業?

厳密に言えば、タワージャズ社(現タワーセミコン)のニューポートビーチ工場のみがティア1となっています。
Wiki情報ですが、載せておきますね。

Fab 3 8 "Newport Beach、CA
Fab 3、所在地Newport Beach 、California 、United States 2008年にJazzTechnologiesと合併したときにTowerに買収されました。JazzSemiconductorは2002年に設立され、かつてRockwell Semiconductor によって運営されていた200mmの施設を継承しました。Fab3で、JazzはSiGe <40を設立しました。>、BiCMOS およびMEMS テクノロジーを採用し、航空宇宙および防衛産業に焦点を当てた陸上の専門ファウンドリサービスの伝統を拡大しました。

https://ja.isecosmetic.com/wiki/Tower_Semiconductor

タワージャズ社(現タワーセミコン)のニューポートビーチ工場の成り立ちは、
1996年にロックウェルグループの半導体部門として誕生し、ジャズセミコンになり、さらにイスラエルのタワー社に買収されタワージャズとなり、さらに現在は社名がタワー社になっています。
最近はインテルが買収をかけている事で話題になっていますね。
つまりタワージャズ社(現タワーセミコン)の中でもニューポートビーチ工場のみが、ロックウェル時代から米国の軍事航空宇宙関係を担っていた工場なんですね。

ちなみに、米国のDefense Microelectronics Activity (DMEA)のデータでは、このニューポートビーチ工場をJazz Semiconductor Trusted Foundryと掲載しています。
※このDMEAのサイトはどうも日本からはアクセスできないようです。
米国在住の方に調べていただいた情報だったのですが、気づかずに八洲子の部屋第10回で色々のせて解説しちゃった(;'∀')テヘペロ-
どんなのか見たい人は動画を見てください☆

こういう図を紹介しています。(いちおうぼかしておいた!)

(と思ったら、アーカイブなら日本からでも見られるみたいですw)

というわけで、TPSCoでパナと合弁しているタワージャズ社(現タワー社)の中でも、元ジャズセミコンのニューポートビーチ工場のみ米国防総省ティア1という事です。

・TPSCoはタワージャズで設計したデュアルユース技術や軍事技術が含まれるチップを生産する?

深田萌絵さんがこの件で騒ぎ始めた2019年~2020年、このような主張をしています。

パナソニックが間接的に保有するイスラエルのタワージャズ社との合弁は米軍向けのチップも製造している。 それを台湾の新唐科技の焦佑鈞が手に入れて中国に移管することは日本の自衛隊の機密も漏れる事態となる。 それをパナソニック社長は知らない? 中国に本社を移転したい人が知らないとかあるかな?

Posted by 深田 萌絵 on Sunday, January 19, 2020

パナソニックが間接的に保有するイスラエルのタワージャズ社との合弁は米軍向けのチップも製造している。
それを台湾の新唐科技の焦佑鈞が手に入れて中国に移管することは日本の自衛隊の機密も漏れる事態となる。
それをパナソニック社長は知らない?
中国に本社を移転したい人が知らないとかあるかな?

https://archive.li/5DEco

《間接的に》もなにも、タワージャズ社(現タワーセミコン)との合弁は、日本にあるTPSCoの工場のみで、米国やイスラエルにあるタワージャズ社の工場にパナソニックの資本は入っていないし、関係ありません。
《間接的に》などというよくわからない言葉を持ってきて、関係があるかのように見せかけて何がしたいのでしょうか?

前述したとおり、ニューポートビーチ工場のみティア1なのに、日本にあるTPSCoで米国の軍事技術が含まれるようなチップを生産すると思っている事自体が「は?」というかんじですね。

図解を作ってみました。

米軍用チップを製造するティア1工場は、パナソニック半導体事業売却と無関係

ヌヴォトンに買収された後、
TPSCoの工場は砺波と魚津の2つになり、新井工場はヌヴォトン所有の工場になっています。

2019年当時のタワージャズ社の工場一覧ページ(アーカイブ)↓

2022年11月には、新井の工場が掲載されなくなっていますね↓


おまけ。

深田萌絵さんはこの嘘記事でタワージャズ社がGaN(窒化ガリウム)の半導体の製造技術があるとしていますがそれも間違いです。
タワージャズ社にはGaNの技術はなく、あるのはSiGe(シリコンゲルマニウム)の技術です。
深田萌絵さんの記事には、いくつもの嘘が散りばめられています。

・nuvotonは台湾企業と思われているが、青幇・浙江財閥企業なので、実質中国企業?

深田萌絵さんの話ではお馴染みの青幇・浙江財閥ですね。
青幇は、昔、第二次大戦中などに暗躍した有名な闇組織ですね。
中国共産党との闘いで追いやられ、台湾に渡ったとされています。

青幇自体は現在も活動はあるようですが、半導体産業を牛耳っていたり、青幇のトップがWinbondの焦佑釣氏であるという事実はどこにもありません。
深田萌絵さん発の情報でしか見かけたことがありません。
亜細亜新聞CHさんのサイトに、青幇を取材し、リアルな青幇を知る日本人映画監督さんがコメントを寄せていましたので、詳細は↓の記事をご確認ください。

中国出身のいわゆる外省人という方達をまとめて陰謀論にぶっこむのに、「青幇」や「浙江財閥」というワードはとっても便利なんだろうな・・・と私は思っています。

とにかく血の繋がり、ファミリーで、浙江財閥が世界の半導体事業を牛耳る為に暗躍し、その浙江財閥は台湾の顔をしながら中国へ軍事技術などを移転して、中国共産党とつるんでいる・・・というのが深田萌絵さんやそこの技術者のJason Ho(后健慈)のシナリオです。

台湾の半導体製造大手TSMCは、創業者のモリス・チャン氏が浙江省出身だからというだけの理由で浙江財閥の会社という事になっています。
台湾の護国神山とも言われているTSMCが、創業者が浙江省生まれという理由だけで中国ファーウェイのフロントになってしまうそうです。

このTSMCはファーウェイのフロントという深田萌絵さんの嘘については、Togetterのまとめを参照いただければと思います。


・F-15やF-35のレーダーチップが、パナソニックの半導体事業がnuvotonへ売却された事が原因で調達が困難になっている?

深田萌絵さんは、日本にあるパナソニックの半導体事業が台湾nuvotonへ売却されてしまったため、TPSCoで製造されていたF-15用のレーダー用チップが製造できなくなってしまったかのように吹聴していますね。

しかし、F-15の改修用レーダーは、APG-82(V)1が採用されており、それはレイセオンという米国企業が請け負っています。
当時のパナと合弁でTPSCoを持っているタワージャズ社すら掠っていないんです。全く無関係です。

しかも日本のF-15戦闘機の改修遅延は、
現在カタール用のF-15を製造していたり、米国のF-15EXの製造と時期が被ってしまうため、防衛省が立案したスケジュールでF-15J改修を進めるには新しく製造ラインを立ち上げなければいけなかったり、予算の問題だったり、米国議会での承認が必要だったりと、色々な課題がある為です。

こちらの記事が、詳しく解説されていてわかり易かったです↓
防衛省、F-15J改修に電子戦装置とレーダーの部品枯渇対策経費が必要と認める


なお、政府が交渉した結果、今年の2月にF-15J改修の総コスト(暫定)が発表されていました。

F15戦闘機改修の総コストは68機分で6465億円 防衛装備庁が発表(高橋浩祐) - 個人 - Yahoo!ニュース

防衛装備庁は4日、航空自衛隊F15戦闘機の能力向上のための改修について、装備品の取得費や維持整備費を含めた総コストが68機分で6465億円(暫定値)になると発表した。

具体的には、電子戦能力の向上や多数目標を同時攻撃できるレーダーの更新、相手の射程圏外から攻撃できる長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」の搭載、搭載ミサイル数の増加などの能力向上の費用に加え、運用維持費を合わせた30年間の総コスト「ライフサイクルコスト(LCC)」が6465億円になると試算している。

(そろそろ、私が深田萌絵さんの話は嘘だらけでどこにも事実がないと言っている意味が、皆さんもそろそろ実感してきたのではないでしょうか?)

そして深田萌絵さんはさらに、F-35のレーダーチップもパナソニックの半導体事業がnuvotonに渡った事が原因で調達が困難みたいな事を言い始めたようですが、
F-35のレーダーチップもパナソニック半導体事業売却とは無関係です。
F-35のレーダーチップはNorthrop Grummanです。



果てしなく嘘が続く深田萌絵さんのお話、どれだけ嘘に嘘を重ねてあるかお分かりいただけたでしょうか?
実はこの件だけでもここでは紹介しきれていないのですが、あまり長くなってしまっても読んでもらえないと思うので、今回はこの辺で☆

良かったら素人でもなるべくわかりやすい内容で動画を作っているので、見ていってくださいね☆


おまけ

米国防総省は、軍事技術の不正利用、盗難防止の策を色々張り巡らせているようです。(これもアーカイブのサイトです。)
信頼できるマイクロエレクトロニクスに対する DARPA のアプローチ



わんわ~ん♪

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