大山田大山脈 - Selected Early Works
The Halcyoのボーカリストとして、あるいは安島夕貴名義の弾き語りなど多様な活動を続けるアーティストのゲームのサントラ制作等を通じて電子音楽表現で使われる大山田大山脈名義による2020年の1stアルバム。レーベルインフォによれば「脳内を行き交う電気信号と、セロトニンの分泌量のグラフ、簡素なナンバリングの集積、その荒涼とした景色が辛うじて捻り出す実存の残り滓」とのこと。多様な活動に加えて入り組んだメッセージを持つ一方、作品は非常に淡白な仕上がりになっている。
10は、1990年代の初期リスニングテクノに通じる淡々としたリズムトラックと削ぎ落とされた電子音の積み上げにノイズを織り込んだミニマルな構図だが少しずつレイヤー構造で積み重なるトラックはいずれも透明感ある質感を伴っている。
16は、不穏なテーマメロディーや揺らぎを含む電子音がどことなくレジデンツを思わせる。軽妙なアプローチの飄々としたメロディーを垣間見つつリズムトラックはシリアスなビートを刻んでいる。
27は、電子音楽がしばしば接近するガムラン的なアプローチを軸にしているが一方で暴力的なビートがフレーズの骨格を強化している。テンポを変化させながら重奏する音の厚みはエレポップやゴシックを連想する陰影があり印象的だ。
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