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Prince Istari - Meets Erik Satie Inna Heavy Dub Encounter

ドイツのsozialistischer-plattenbauからリリースされた2024年の本作は、エリックサティのピアノ曲作品を楽譜から電子音に落とし込んだ上で一連の作品をダブ化した作品だ。プリンスイスタリ自身の解説によれば、幼い頃に母親が弾いていたサティの楽曲が本作の原風景になっているという。

Gnossine Dub No 1は、有名なテーマフレーズが登場するまでの間、ひたすらに抑制されたミニマルな音が繰り返される。その間、ダブ処理された音響も大きな飛躍は作られない。この淡々とした空気をテーマが一気に切り崩す瞬間が素晴らしい。終盤に向けて徐々にダブ化していく質感も印象的だ。

Gymnopedie Dub No 1は、様々なポップフィールドのアーティストが取り組んだ作品だが、プリンスイスタリは拍子を変えて、ダブバージョンとしてかなり深い音響を施した状態でジムノペディを披露する。メロディ以外はほぼ解体された状態だがそれでもサティのアンビエント感が残る。それだけこのテーマが浸透しているということではないかと感じる。

Gnossineは、エレクトロニカ的な質感とエフェクトによる静かなアプローチと細かく刻まれたエディットで電子的な質感の強いアプローチだがやはり静謐さが楽曲前半を支配している。中盤の長めのディレイを経て破壊的なドラムンベースがさらに徐々に解体されダブとして成立しつつピアノのメロディーも示す意欲的な展開を示す。本人解説によればこの曲の終わりが冒頭につながっていて、繰り返しプレイできる構成になっているという。家具の音楽のコンセプトを活かしたようにも感じられる心地よいアプローチだと思う。

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