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John Coltrane - Ascension

幾重に重ねられたインプロビゼーションは、2本のトランペットと5本のサックス、ピアノとベース、ドラム、全員が相互に影響し合いながら即興を繰り広げたものだ。1965年発表の本作はコルトレーンのフリージャズへの入り口とされる。レギュラーカルテットにメンバーを追加するという方法で集められたメンバーとの試行錯誤はその後の作品を考えると確かにまだ試行錯誤の過程かもしれないがプロセスが面白いという点では過渡期の名盤だと思う。

パート1は、冒頭非常に慎重なロングトーンとロールから入る。インプロビゼーションはスケールや調性が少なからず意識されていてこの点はコルトレーンの合図があったのかもしれない。時折コードチェンジと思われるシーンの切り替わりがあり、一瞬にして響きが変わる瞬間はとても絵画的で美しい。この点はアンビエントドローンとの親和性が高い。

パート2は、冒頭からテンションが高い。一方で一人一人のプレイヤーに焦点を当てていて和声ではなく音の厚みでメリハリをつけたアプローチを感じる。エルビンジョーンズのドラムはかなりロックに近いアプローチを感じる。チューニングや録音の方法は必ずしもロック寄りではないのでその分独特の感触がある。この点はクラウトロックやポストロックとの親和性が高い。

コルトレーンは本作の初期プレスではテイク1を採用しているが、その後テイク2に差し替えたという。フリーであるということにどこまで音以外の要素を介在させるかは悩ましい所かもしれないが、コルトレーンは少なくとも自身の美学をしっかりと反映させることに躊躇はなさそうだ。音楽ではランダムジェネレータをコントロールするののはオペレータ自身であり、オペレータはその意味では自身の美学によってGO/NGを判断することになろう。アセンションにおけるコルトレーンのジャッジはそれと似たところがあるように思う。

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