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The Monochrome Set - Strange Boutique

Bid率いる「白黒テレビ」を名乗るこのバンドはポストパンクらしさとモダンアート、ライトショーを繋ぎ合わせたような作品を発表してきた。決して器用なタイプではないように思う。しかしビートルズ解散から10年でこういうバンドが多発していると思うと結果論ではあるけれども興味深いしその10年のポピュラーミュージックの景色の入れ替わりは非常に濃厚だと思う。

不思議な曲名と歌詞、ユーモアと内省が渾然一体とした言葉の羅列に、ポップなメロディー、鼻歌を歌うように力まず淡々と進むバンド。ごく普通の光景に時々入り混じる突出。リリース当時どう受け止められたのかは分からない。しかし不思議と安心感あるアルバムだ。

不器用なリズムに薄いリバーブのギターが乗っかるこの時期のニューウェイブ的なアプローチで幕開けするが2分以上続くイントロの末、飄々としたヴォーカルが全く気負わず入ってくるスタイルが素晴らしい。サビは曲名通りだが決して力むことなくバンド名を連呼する。

間奏のシャッフルとエイトビートの入り繰りが心地よいMartians Ho Home、歌い出しのメロディーもサビのコード進行も素晴らしく、その上でタイトルは排水溝にラブが落ちていくとうたわれるLove Goes Down the Drainなど、アルバム後半の楽曲がどれも秀逸だ。モノクロームセットはしかし驚くべきことに彼らは断片的ながらまだ活動を続けていて、しかも最新作もこの頃の作品と大きな違いはなく相変わらず変わらぬスタンスで音楽を奏でている。

(過去に書いた文章を再掲しました)

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