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Prince - Sign O' The Times

16曲80分に及ぶ大作は1987年に発表された。カバーアートに象徴的だがバンドを解散させて概ね密室で作られた本作はリズムボックス使いがとても印象的な1枚だ。十分にヒット曲を重ねつつ、まだラジカルであろうとする姿勢のようなものが凝縮されたアルバムなのかもしれない。その一方でかなりイノセントな部分で曲作りへの衝動のようなものがあったのではないかと思う。衝動とラジカルであろうとする姿勢の集積だろうか。

冒頭のタイトル曲、Sign O' The Timesはワンコードによる密室ファンクにのせて淡々と日記のようにニュースが語られる、そしてコードチェンジするところで「ロケットが爆発しても、それでもまだ人は飛びたいと思ってる」というような歌詞が歌われる。おそらくは1986年のチャレンジャー号爆発事故が由来であろう。言葉にしづらい感情をニュースを題材にして語るオープニングは本作が極めて内省に基づくものであると予感させる。

部屋で大音量の音楽が流れ、そのキックやサックスで家が揺れる、親を揺さぶる必要がある、畳み掛けるラップが印象的なHousequakeは中盤のオルガンのロングトーンが素晴らしい。続く、The Ballad of Dorothy Parkerは、LoFi Hiphopにも通じる揺らぎをもったエレピと叩き出されるリズムボックスが素晴らしい。

アルバム後半では、The Crossのスロウコアにも通じるギターストロークとシンプルなコードに合わせた美しいメロディーが印象的だ。私たちは各々それぞれの事情で問題を抱えている、と静かに独白を続けるこの曲はその後のプリンスを思うと非常にエモーショナルに響く。後半徐々に激しくなるギター、エンディングのコーラス、とても美しい。

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