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Brian Wilson - At My Piano

ブライアンウィルソン自身が自作曲を奏でるピアノインスト作品。本作は2021年にリリースされた。ブライアンウィルソンはライヴでもピアノを弾くことが多い。それであっても純然たるピアノ作品のリリースはおそらくこれが初めてではないかと思う。エコーにつつまれた音響はウォールオブサウンドのたどり着いた先というようにも思える。またブライアン自身の演奏によって、あるいは選曲とその並び順によって、ブライアンが楽曲のどの部分を特に打ち出したかったのかを垣間見るような気がする。Brian Wilson presents SMiLEと並んで素晴らしい取り組みだと思う。

Don’t Worry Babyは、まさにフィルスペクターへの憧憬を強く感じる楽曲で、本作に選ばれていることやアルバム全体の音響の質感からも最もエモーショナルな仕掛けだと思う。折り重なるコーラスや、サビの最後でルートを外すベース音など美しさがそのままピアノで全て表現されている。

Surfs Upは、発表までに紆余曲折あった物語と切り離せない存在だが、陰影を帯びた和声に乗せた流麗なメロディーがやはり素晴らしい。おそらく断片を少しづつ組み立てて作ったであろうこの曲をピアノだけで通して弾くことで繋ぎ目部分のシーンの移り変わりにはっとさせられる瞬間がある。

Till I Dieは、とても不思議だがオリジナルトラックと同じフィーリングを感じる。深いエコーがその理由かもしれない。楽曲のテーマそのものが持つ深淵さかもしれない。朴訥とした演奏がこの曲の低音の美しさも流れるようなメロディーも驚くべき転調も全てを包みこんんでいる。

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