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Paul McCartney - McCartney

本作はLet It Beの発売ひと月前に発表されている。ゲットバックセッションの様子は暗いトーンと、比較的穏やかなトーンの両面を観ることができる今、実際にどういう状況だったのかはむしろ計り知れない部分が増えたように思う。一方で、物事にはやはり様々な側面があってそれは1969年以降のビートルズも同じかもしれないなとふと思う。本作は知られている通りほとんどの演奏をポールがこなしている。その後、1980年と2020年に同様にそのアルバムタイトルから連続性を感じさせるほぼ一人で作られたアルバムが発表されている。

Junkは、ギターのストロークが奏でるマイナーコードと叙情的なメロディーが印象的な曲だ。中盤の繊細なコード進行がとても美しい。ひとり感の強い仕上がりがとても心地よい。この曲は1969年に自宅で録音されたものらしい。まだアルバムの全体像が見えない中での録音だったのかもしれない。ベッドルーム感が素晴らしい。

Maybe I’m Amazedは、”the way you help me sing my song” 、君がいるから僕は歌える、ポールは2010年代においてもこういう繊細さを歌に込めることがあった。こういうナーバスな部分とポップミュージックを牽引し続けた大きな存在の中で生きるというのはどういうことなのか、想像もつかない。楽曲はとても美しくこの曲がLet It Beに収録されていたらというレビューを読んだことがある。一方録音は、1970年に入ってからEMIスタジオで行われたものらしい。その意味ではすでに明確にソロアルバムを意識して作ったものかもしれない。

Kreen-Akroreは、冒頭2分に渡ってドラムソロが展開した後、ブライアンウィルソンを連想する低音から高音までシルキーなコーラスが入る。続いて、息遣いの中で再びドラムソロに入る。ラストに収録されたこの曲はブラジルのインディオにささげた曲だという。このトラックも録音は1970年に入ってからのもので、ラジカルなアプローチだがソロアルバムを想定して目指す方向性を模索していた所かもしれないとふと感じた。

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