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Khan Jamal ~ Drumdance to the Motherland

2006年に発表された本作でもサンラを始めとするスピリチュアルジャズ人脈の交流から分かるアヴァンジャズへの向き合い方や姿勢は遺憾なく発揮されているように思う。アルバムタイトル通り、リズムを強調した演奏が多いが一方でそのリズムそのものを曖昧にさせるエコーが全体のコンセプトを大きく覆っている。

まず冒頭の暴力的なまでのエコーに散らされたCosmic Echoesが凄まじい。マリンバ奏者ながらここではヴィブラフォンやマリンバは中盤に至るまでほぼ登場せず終始ドラムを軸にした音響的なアプローチが続く。中盤以降も概ねエコーの中で音楽は続く。

タイトル曲はよりストイックにリズムへの追及が行われているが、エコーが次第に強まり、また突如消失し、揺らぎの幅が大きい。中盤以降、カーンジャマルによるソロが披露されるが気極めてプリミティブな演奏が力強い。一つのテーマを解体し構築するオーソドックスなスタイルだが前半の大きな揺さぶりの後に続く演奏であり迷いのないアプローチなのだろう。

スピリチュアルジャズを体現するInner Peaceでは静かなギターソロが心地よい。ここでもエコーは深く輪郭は曖昧だが、弦楽器の先鋭的な質感は残されており揺らぎを含めたメロディーが一連のソロに回収されていくさまは見事だ。

(過去に書いた文章を再掲しました)

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