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João Gilberto - Live In San Francisco, 2003

2000年以降数年のジョアンジルベルトのアグレッシブな活動はボサノバのオリジネイターとしてのある種の使命感をも感じる力強い活動だったようにも思える。2000年にリリースされた「声とギター」とそれ以降の各地でのライヴは楽曲の完成度を飾り気なくそのまま差し出されたような強さがある。本作は2024年に音源として発表されたがオリジナルボサノバの完成形が詰まっているように思う。

Waveは、アントニオカルロスジョビンのA&Mのオーケストラアレンジが非常に印象的だが、対照的なギター1本で歌われるこのアレンジがなぜかオーケストレーションをともった演奏と印象が重なる。美しいコードの響きを広範多層的な音域で表現する厚みと、そのコードを知り尽くした本人がギター1本で表現することの凄みがアレンジを超えてどこかつながるように感じる。

Samba de Uma Nota Soは、冒頭のシンプルなメロディーがギター1本でどこまで支えられるか、非常に難しい曲だと思う。ジョアンジルベルトは時折単音に絞り込むなど、むしろ音を一層削ぎとしてこの曲を披露した。本当に必要な音だけを響かせるというような事が十分に吟味されているのかもしれない。

Garota de Imanemaは、ラフなコード演奏からごく自然に始まる。楽曲がはじまる瞬間のオーディエンスの空気感が素晴らしい。この曲でもやはり音は削ぎ落とされていて、ジョアンジルベルトがベース音に頼らずテンションを響かせるアプローチがとてもわかりやすく提示されている。本当に高度な洗練と結実を見るようなライヴだと思う。

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