見出し画像

"Perfect Days" Film Soundtrack

タケノコさんのお勧めでヴェンダースの2023年公開映画「PERFECT DAYS」に登場する楽曲のプレイリストを聞いてみた。都会のアリス、パリテキサス、ベルリン天使の詩など、ヴェンダース代表作の選曲はポストパンク的な視点からみたプレパンクへの眼差しと橋渡しの構築が見事だと感じている。本作は1970年代前半までを軸にしたポピュラーミュージックからの選曲だがやはり同様の視点を感じた。なお楽曲は挿入歌というより、主人公がストーリーの中でかけるカーステレオから流れる音楽、カセットテープのコレクションという位置付けになっている。上述の作品でも劇中のライヴなど、あくまでストーリーの中で登場する音楽として使われる事があり、これらのアプローチに音楽への強い眼差しを感じる。この点をハイコンテクストと見るかどうかは評価の分かれるところであろう。ここでは純粋にプレイリストからのレビューに絞り込んでみたい。

(タケノコさんの同作品のレビュー)

Velvet UndergroundのPale Blue Eyesは、彼らのファーストアルバム収録作だが、歌詞の中でso happy と so sadを行き来する、それでもLinger on、とりあえずは続けさせてくれという出口の無い言葉がとても淡く美しい。楽曲が淡々とした構成であるほど、このつぶやきが刺さる。また映画の中でも最初に選曲されているのが印象的だ。 

Otis Redding のThe Dock Of The Bayは、歌詞のJust sittin’ ~ Wasting’ time、ただ座って時を過ごすという諦観と同時に本作が遺作となってしまったことも選曲に大きな意味を持たせているように感じる。また、映画タイトルにもなっている、Lou ReedのPerfect Daysはルーリード作品の中ではむしろヨーロッパ感覚を含む和声感覚が印象的な楽曲だが選曲の軸になっていることを思うと非常に興味深い。

Nina SimonのFeeling Goodは、前向きなタイトルにかかわらず非常に重く社会的なテーマをメタファー的に歌い込んだ歌詞が印象的だが、この映画のラストに選曲されていることからこの辺りの社会性と暖かい眼差しはストーリーに深く刻まれたものだろうと感じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?