「やさしい日本語」で防災講座④
大きな災害後は人が集まりやすい防災訓練や防災講座ですが、日本人向けでも、外国人住民向けでも、人を集めるのはたいへんですね。
そんなことについてのアイデアです。
お土産
非常食を食べたり、災害用ホイッスルなど携帯用トイレ、携帯用ライトなどのグッズを配布することもあります。これらのお土産は、人集めや受講者のお楽しみの意味も大きいですが、防災意識が講座のの時だけで終わらず、持ち帰って「それなあに?」と家族や友だちに尋ねられた時に、答えることで知識が定着したり、家族や友だちへの啓発になったり、「ああ、そういえばあの準備ができていない」などの気づきにつながります。
2015~17年に有志の会が行っていた防災講座では、JR西日本あんしん社会財団さんから助成金を活用して、外国人の参加者に災害用ホイッスルを配布していました。「助けを呼びたいとき、この笛を使います。中の紙に名前を書きます、家のカギに付けてます、いつも持っていてください」などとお話しします。講座に来られなかった人にも、今日来た人がいろいろと話してもらえるといいなぁ、と思って配布していました。
多言語資料の配布を
せっかく外国人住民も集まる機会ですから、国際交流団体の資料はもちろんのこと、行政や消防が作成した多言語の資料や「やさしい日本語」の資料も揃えて、ほしい人に持って帰ってもらいましょう。横浜市では外国人が市に転入すると『外国人住民向け情報セット』が配布されるそうですが、こういう取り組み大事ですよね。(情報は必要は人に届けて、読んでもらうことまで含めてやらないとダメです!) 国が、都道府県が、市町村が、消防署が同じような内容の多言語資料を作り、死蔵しているケースや、かなり内容が古いケースも多くあります。せっかく外国人住民が集まる機会ですので、防災だけでなく、生活情報、子育て、届出、福祉など探して配布できるように準備してください。外国人住民を日常でサポートしていたり、近しい方もそういった資料があることすら知らない、初めて見る!と言われることが多いです。「この資料、私の知っているあの人に届けてあげよう」といった機会にもつながるかもしれません。
雇用している企業に
ある地域で外国人も参加する防災訓練の企画会議でのこと。行政担当者は「技能実習生にチラシを配っても、休日にわざわざ出てくれることは少ない」とぼやいていましたが、防災の重要性は技能実習生はもちろんですが、雇用している企業の方に働きかけるべき話だと思います。それこそ、災害はいつ起こるかわからない、就業時間外の夜中や休日に大きな地震が起こったらどうするの? 防災教育は雇用側の責任でもあると思います。
幸いその地区は山間なので津波の心配はなかったのですが、2018年に防災講座をさせていただいた大分県佐伯市米水津(よのうず)は海と6mの道路を隔てて民家と山々が続く海岸地域。南海トラフが動けばたった15分で津波に襲われる場所です。水産加工会社で働く実習生は18-19歳の中国、ベトナムから来た女の子たちでした。地震が起こって、社長に連絡とって、指示を仰いで避難するといった悠長ないことを言ってられません。すぐに自分たちで判断し、避難しなければならないのです。もちろん、普段から防災意識が高い地域で、防災訓練もしておられます。
この地域で商工会議所の職員であった谷口里美さんは、その後「よのうづ国際交流の会」で日本語教育を担われ、実習生からも雇用企業さんからも厚い信頼関係があり、この防災講座を企画し、講師として呼んでくださいました。講座は地域の平日、就業後の夜です。実習生だけではなく、雇用会社の社長さん、社長の奥さん、消防署員、住民など2日間合計95人も参加してくださいました。そして、研修生や実習生の身の回りのお世話をいろいろと焼いておられるのは社長の奥さんというケースも多い。忘れずお声がけするべきだと気づきました。
地域の企業に協力を依頼
地域に防災に関心のある企業はないでしょうか。今はSDGsに関心の高い企業も多く、外国人を雇用していなくても、行政と協定を結んで災害時に活動する企業や、防災まちづくりに協力的な企業があります。協定を結んでいる企業はたいてい行政のHPに掲載されています。たとえ具体的な協力が得られなくても、「防災講座の案内」をすることで、国際交流団体の活動PRになったり、日本語教室や「やさしい日本語」を知ってもらうきっかけになるかもしれません。企業に負担を求める姿勢ではなく、何かの形で協力していただける関係が次につながるかもしれません。
防災講座は防災の入り口であり、きっかけに過ぎません。それをきっかけに、防災意識が高まったり、準備をしたり、今まで気づかなかったことに気づいたり、何かが始まったり、そんなお土産を受講者に届けられるようにしたいです。
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