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ヒマワリ…She is Mohican

燃え盛る本能寺

血まみれの寝巻きをかなぐり捨てて、涙目の蘭丸にまとわせ、信長は死に物狂いで地下道から逃れた

仄暗い藪を掻き分けると、ワラビを手に不思議そうに見つめる異形の者と目が合った

『これ、何?』異形の者が尋ねた

信長はワラビと言いかけて無視を決めた。濁声がハゲネズミと似ておる――。

『誰がハゲネズミやねん』

「うぬは心が読めるのか」

『しっかり声に出とったで』

異形の者は細長い中指をおっ立てた

すると山菜を握った仲間が現れ、あれよという間に捕縛された

『我々は2083年の奈良からやってきた』

真顔でそう言い張る。見るからにグレイに拉致された信長は取り乱し、浮かぶ円盤の中で暴れ狂った

「人間五十年」

『シャラップ黙れハゲ』

「ハゲはおのれじゃ!」

全身の穴という穴を山菜で塞がれると、激しいクラッシュ音が耳のヨモギをつんざいた

『でっかい、蚊だったよな』

どんぐり眼が小さめのグレイAが窓外を見やり、おちょぼ口のひどいグレイBが首を傾げた

『天空に、蚊?』

「雲の上で誰の血を吸うんじゃ!」

信長が吐き捨てるようにつっこんだ

『普通にスカイフィッシュやろ』と、やけに冷静なグレイCが呟いた

その空魚が円盤に衝突したらしく、何食わぬ顔で飛び去っていった

かと思えば、メルカリ震度12ぐらいの揺れに襲われた

『No!』
『Jesus……』
『ah ha』
「Oops」

円盤、落下

その際、あろうことか信長がアセンションスイッチのボタンを後頭部で連打してしまい、2012年の米モンタナ州に不時着、三匹のグレイと共に記憶を失った信長はスミス一家に拾われた

怖いもの見たさで手厚く介抱された信長と三匹のグレイは、何の違和感も覚えることなく、のんびりと家に居ついた。スミス家の末っ子チャックに「ボールド」と名付けられた信長は、やがてインターネットにどっぷりはまり、ある女性に恋したとさ


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