蔵出し:「子どもの頃からResearch Question?!」from 野菜さらだの『アメリカは、住んでみなくちゃわからない!』(第36回)
※この蔵出しシリーズは、1996年~2002年までアメリカに留学していた野菜さらだが後半の1999年~約三年間、週2回発行していたメールマガジンの記事をそのままそっくりお送りするものです。今回は、毎日更新していきますので、お楽しみいただければ幸いです!
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野菜さらだの
『アメリカは、住んでみなくちゃわからない!』(愛称アメすん)
(1999/10/1発行) 第36号 (火・金曜発行+日曜版)
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前回、アメリカの学生はどんな小さな疑問でも授業中すぐに手を挙げて質問する、ということをお伝えしました。その理由にはいろいろあると思いますが、この「質問する態度」言い替えれば「疑問を持つ態度」は一日や二日で培われるものではありません。そのヒントとなるような出来事を以前動物園で見たことがあり、本日はこれをテーマにお送りします。
◆本日のテーマ「子どもの頃からResearch Question?!」
「Research Question」とはいわゆる「研究の目的」と言われるもので、
ある研究を行うことによって明らかにしようとする疑問のことです。この「疑問」があって初めて「科学的な研究」が成立する、そういう科学の根幹を成すのがこの「Research Question」という訳です。言い替えれば、なぜだろう?という何かを疑問に思うところから科学はスタートするのです。
アメリカ人学生にこの科学の根幹を成す「疑問を持つ」態度が当たり前に身に付いている、その基盤作りの一端を以前ポートランドの動物園でかい間見ました。一見、そこは普通の動物園で、いろいろな動物が日本の動物園と同じように飼われているのですが、うちのダンナと二人で大変驚いたのが、いくつかの動物のコーナーに、「Research Question 」とタイトルのついたポスターが大きく掲示してあったことです。例えば、クマのコーナーに「クマは時間をどのように使っているのでしょうか?」というResearch Questionが掲げられていました。
さらに驚いたのは、その横にその疑問を解決するためにクマの行動を観察して記録するためのデータ記録用紙が用意されていたことです。もちろん、その記録用紙は子ども向けの簡単なものですが、それは立派な行動観察記録用紙で、30秒に区切られた時間軸と、クマの行動、例えば、眠っている・歩いている・他のクマに触っているなどとのマトリックスになっており、30秒間クマを観察した間にどの行動が出現したかをその用紙に記録できるようになっていました。この記録用紙を使って子どもが自分でクマの行動を観察すると、最初のResearch Questionに自身で答えられる、そういう仕組になっているのです。
私とダンナの記憶の限り、日本の動物園でこういった行動観察記録用紙なるものを、ましてや正規の研究者も使う「Research Question(日本語では、
研究の目的となるのでしょうが)」という用語を見たことはありませんでした。それがこんな子どもの頃から、こういった自分の疑問を明確に文章化した上で、それをどうやって確認すればよいかという方法論を実際の場面で学ぶことが動物園という場で提供されていること、一応アカデミックという領域を見聞きしている身としては、驚き以外の何ものでもありませんでした。
「自分が明らかにしようとしている疑問は何か?」そして「その疑問を解決するにはどのような方法を用いたらよいか」「得られたデータから何が言えるか」というまさに科学研究の枠組み「研究の目的」「方法」「結果とその解釈」ということがこのクマのコーナーの前に集約されていた訳です。
様々な科学研究の分野でアメリカが世界をリードしているその裾野の広さはこんなところにあるのかもしれない、そうしみじみ思いながらクマのコーナーの前でしばしたたずんでおりました。 (つづく)
◆おまけ情報:この話をあるアメリカの大学の先生としたところ、「教官の言うことを鵜呑みにして、何の疑問も湧かないで、どうやって科学を進歩させるの?」と言われました。確かにその通りと思います。皆さんはどう思いますか?
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◆お断り:この『アメすん』は、かつてアメリカのオレゴンに住んでいた野菜さらだが個人的に体験した、おもしろい話を友だちや家族に話すようなつもりで書いたものです。アメリカの他の場所とは違う、というエピソードも中にはあるかと思いますが、まあ、気楽に読んで楽しんでください。
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