経営と法務、そして自己決定

先日の『企業法務革命』についての投稿の後、
「経営と法務」に関する日本最大級のオンラインカンファレンスがあるとの情報が目に入ってきました。

https://legalforce-cloud.com/page/seminar/lfc2020/seminar_lfc2020.html

関心のありそうな方何人かに連絡するとともに、
私も申し込みました。

「経営と法務の関係性」ということが一つのテーマで、
企業の中での「法務」というものの役割や機能の変化が
背景にあると思います。

私が興味を惹かれるのは、
このテーマは、より広く、
「意思決定と法の関係性」というテーマ
にもつながると思われるためです。

法律というものは、これまでは、
「自分はこうしたいが、それは法律に反するかどうか」という形で
捉えられることが多く、
「意思決定の外側にある制約」というイメージが強かったと思います。

しかし、
法務という社内の組織を通じて、
法規制の状況等をいったん取り込み、受容した上で、
その制約の存在を前提とした経営判断をしていくというプロセスの中では、
法律はその会社の「判断材料の一つ」であって、
意思決定の「内側にあるもの」に変わっています。

このことは、
「自己決定」ということと深く関わってくるものであり、
弁護士と依頼者との関係性についても
再考を迫るものと思われます。

つまり、
法律知識が弁護士等法専門家の専売特許であった時代は終わり、
依頼者の自己決定のプロセスの中に、
法専門家はどう関わっていくのか、
ということを考えなければならない時代になってきているという
気がするのです。

ところで、
カール・ロジャースという臨床心理学者がいます。
「カウンセリングの神様」と呼ばれ、
クライエント中心療法等を提唱し広めた人として有名です。
カウンセリングの領域におけるロジャースの影響は、
それを抜きにしては
今日のカウンセリングを語れないほど
であると言われます。

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クライエント中心主義は、
従来の専門家カウンセラーの関わり方を根本的に覆したもので、
カウンセラーがクライエントの問題を抽出し、診断し、助言するのではなく、
クライエント自身が、目標設定や評価を行い、
自由な自己表現を通じて、自己の成長を実現していくことが重要であり、
専門家は、クライエントの自己成長・自己実現を援助する役割として再構成されています。

臨床心理の世界と弁護士の関わる法実務の世界は異なるところもあって、
法律知識の提供や助言は不可欠であり、
そのまま同じことを行うことはできないのですが、
弁護士が依頼者と向き合い、コミュニケーションを取っていくうえで、
カウンセリングの考え方や技法を弁護士実務に応用したものとして
「リーガル・カウンセリング」ということが言われたりします。

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こうしたクライエント中心の考え方・発想からは
法専門家としての弁護士と依頼者の関わりについて、
深く示唆されるものがあります。

私には、今、
企業であっても個人であっても、
「自己決定」ということと「法」の関わり方に、
大きな変容が起きていると感じられます。

依頼者自身の人生やビジネスの流れの中に、
自分はどうかかわっていけばよいのか、
折に触れ、
今後も考えていきたいと思います。

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