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映画レビュー『mid90s』人生を豊かにするのは夢中になれることと仲間だ

久しぶりにクールでおしゃれな映画に出会った。

最近ますます存在感を増している新進気鋭の映像スタジオ『A24』による作品。とにかくイケてる映画をつくり続けているイメージだが、本作も冒頭からその世界観に魅了された。

一般的に当たり前とされている冒頭のブランドロゴムービーを本編のなかに溶け込ませてきた。キーアイテムとなるスケボーを並べて「A24」の文字をつくり、それに乗って散らばっていく映像からはじまる。これだけでセンスの塊を感じる。

そして冒頭で観客の心を掴む演出が際立っていた。固定カメラと無音を効果的に使い、緩急で一気に惹きつける。全編において音楽(無音という音楽も含む)の使い方が上手かった。

90年代を彷彿とさせる映像サイズと画質にもこだわりがあり、むしろ古さより新しさを観ている気分になる。

若さゆえの虚栄心で、自己表現のためにはワルになることが手っ取り早い方法だが、本当のかっこよさはそこに信念があるか。仲間の信頼とは自分を偽って媚びるのではなく、真摯に掴み取るものである。

将来に漠然とした不安を抱えながら生きていく若者たちの友情と成長の物語。みんなそれぞれ善悪を持ち、幸も不幸も抱えながら生活している。つらい経験をするほど強くなれるが、ないに越したことはない。命よりも大切なものはないから。

チャレンジすればチャンスを掴むことができるけど、無理にリスクを負う必要だってない。自分らしく生きることが最も尊い。

たとえそれで何者かになれなくても、仕事にできなくても、夢中になれることに没頭することが人生を豊かにする最強の方法である。真面目に働いてお金を稼ぐことだけが人生ではない。

青春とは色あせず、人生においてとても大事な時間。みんなつまづきながら、それでも支え合い、前を見て成長していく。そんな背中を押さずとも、強く肩に寄り添ってくれる作品。

与え合いの恩贈りで巡る世の中になったらいいな。 だれでも好きなこと、ちょっと得意な自分にできることで、だれかのためになれて、それが仕事にもできたら、そんな素敵なことはないですね。 ぼくの活動が少しでも、あなたの人生のエネルギーになれましたらうれしいです。