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『夢を確かめる』リニューアル版のUIについて

ヤプシ街道の士戸です。
制作の方、かなり佳境に入りつつあります。素材の組み込みとテストプレイを入念に繰り返しながら、慎重に進めていきたく思います。

本日はどこかのタイミングでお伝えしておくべきこととして、リニューアル版のUIに関する投稿となります。
『夢を確かめる』リニューアル版は、「Nscripter」で制作しています。
お若い方々には馴染みがないかもしれませんが、2000~2010年代において同人ノベルゲームの多くが採用していたスクリプトエンジンです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/NScripter

ヤプシ街道が現役で活動していた2000年代後半は、同人ノベルゲーム制作といえば「Nscripter」かもしくは「吉里吉里」という雰囲気でした
Nscripterは同人流通であれば使用料も無く、またスクリプトの工夫次第で柔軟な演出ができるため、当サークルでも(もっと遡るならば、士戸がその前に所属していたサークルBALANCEでも)採用しておりました。
そして2023年現在、「同人ゲーム」から「インディーゲーム」という名称が一般化している状況にあって、非常に多くのゲーム制作ツールが登場していることを知りました。

この度、『夢を確かめる』リニューアル版を制作するにあたってエンジンの選択は悩みました。現在の主流となっているツールを使わせてもらうか、旧版と同じくNscripterで作り直すか――結局、選んだのは後者です。
その理由として最も大きいのは、本作の目玉(?)とも言える微妙なシステム「YTIシステム」があるからです。
※詳しくはこちら↓を参照。
https://note.com/yapushikaido/n/n9256fe78bab3#:~:text=%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%82%84%E3%82%89%E3%80%82-,%E5%8D%98%E3%81%AB%E3%81%8A%E8%A9%B1%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%84%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%AA%E3%81%AE%EF%BC%9F,-%E3%81%9D%E3%81%86%E5%95%8F%E3%82%8F%E3%82%8C

この「YTIシステム」、一言で説明すると「バッドエンド直行選択肢を選んだ時にいちいちロードせずにすぐに戻ってこれる」というものなんですが、この前段階として「選択肢を選ぶ画面の猶予期間」があるというのがポイントとなっています。
つまり、「A」と「B」という選択肢が画面に出てきた際、本ルート「A」のシナリオは、クリックする度に画面に次々と表示されていくものの、片方の「B」選択肢もずっと画面上に残っているという演出になるのです。
しかし、画面の文字数表示にも限界はありますので、「A」シナリオのテキストが改ページになってしまうと、さすがに「B」選択肢は消えます。もしも「B」の方を試しに選んでみたかった時は、画面に表示されている間に(「A」シナリオを読み進めていかない内に)クリックしてね、ということになります。

選択肢が出ている画面に出ている状態。黄色が「YTI」用の選択肢、灰色が「本ルート」用の選択肢となります。黄色を選ばずにこのままクリックしていくと、以下のように「本ルート」のシナリオがどんどん進んでいきます。
「本ルート」のシナリオが進んでいっても、黄色の選択肢(YTI用)はちょっとの間だけ残っており、選択可能のままです。しかしここからもう1度クリックすると、ページが切り替わります。この「猶予期間」的な画面表示がスクリプトの処理としては超面倒くさいのです。

こうして文章で表現すると非常に分かりにくいと思いますが、実際にプレイしてみると「ああ、そういうことね」と感触をすぐ掴んで頂けるはずです。実際の具合がどんなものであるのかは、君の目で確かめてみてくれ!(さりげなく宣伝)

――で、宣伝は置いときまして、この「YTIシステム」の仕様、大変にスクリプター泣かせでありまして。当サークルの職人スクリプター・一葉くんが、2010年当時に泣きながら作り上げたものでもありました。
そもそもNscripterというエンジンが、こうした処理を基本的に想定していないため、工夫という名の力技で上記の演出を再現せざるを得ないのです。
分かりにくい例えを出すならば、因数分解の問題で公式やたすき掛けなどを使わずに、xやyに入る数字を1から順番に当てはめていっているような感じです。数学できない人(士戸のことです)が挑戦して、計算用紙が真っ黒になるやつですな。ああいうタイプの「力技」を、「YTIシステム」の選択肢が出現する度に一葉くんが膨大な労力を費やして打ち込んでくれた末に、旧版シナリオは実現しました。

リニューアル版でもしも別のエンジンを採用するとなった場合、この「YTIシステム」問題をまたイチからやり直すとなると、ちょっと準備に時間がかかり過ぎます。
……という事情がありまして、Nscripter続投という判断になった次第です。12年前からタイムスリップしてきたという設定だと思ってください。

他にも、ウィンドウ表示のサイズも旧版と同じく800×600となります。
今どき800×600?と思われる方がほとんどでしょうが、これは背景素材のサイズがもはや旧版のデータしか無く、無理矢理にリサイズやトリミングしても違和感が生じるだけではないかと判断し、旧版そのままとしました。
弱小同人サークルゆえの限界ということで、ご容赦頂ければ幸いです。

おそらく現在のゲーム環境に慣れ親しんだ方々からすると、今回のリニューアル版の仕様は「古っ!」と驚くレベルだと思います。
たとえNscripterを使ったとしても他のエンジンに劣らない、バリバリの華麗な演出にすることも工夫次第でもちろん可能なのでしょうが、今の私たちにそれを実現するだけの余裕はありません。おまけシナリオと追加要素を組み込むだけで精一杯でした。
リニューアル版を色々と楽しみにして頂いている方は、以上の点だけはどうかご了解頂ければ有難く思います。

その代わり、内容に関しては大変面白いものになったと捉えております。
多少の自画自賛は入っておりますが、こんなゲームを作ることができるのは私たちしかいない、と確信しています。
同人活動であるがゆえの素人臭さは残しつつ、サプライズ精神に満ちたものをお見せできるようラストスパートしておりますので、もう少しだけお待ちください。この「もう少し」がいつも長いのですが、今回ばかりはホントに「もう少し」のはずです。
旧版プレイ済の人も新規プレイの人も、どんな内容になっているのか、ここから先は君の目で確かめてみてくれ!(これ言いたいだけ)

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