見出し画像

外国人、ホームレス、戦犯、そしてクソゲー

入管で家畜のように扱われ、死ぬがままに放置された外国人の話があったり、ホームレス、生活保護受給者に価値がないという話があったり、戦争や戦犯の話があったりと、いろいろ気が滅入るようなことばかり目につく。

そして、いろいろとまとまりのないことを考えてしまう。

現在のチーム対戦ゲーム界隈では、「戦犯」という言葉がよく使われている。チームの対戦において、自身の属するチームに不利益をもたらし、勝利を妨げたことを意味している。ビデオゲームだけでなく、スポーツなどでもよく使われる言葉でもある。

このことがすごく気になる。というのも、このような使い方は、「戦犯」という言葉のもともとの使い方とまったく逆のものとなっているからだ。

もともと戦犯という言葉は、戦時交戦法の違反者などに使われるもので、平和に対する罪や人道に対する罪を犯した者を指すものだった。

例えば、世界大百科事典(第2版)では、「戦犯」という言葉について次のように記述している。

戦争犯罪人war criminalの略。第2次世界大戦後,連合国の軍事裁判で戦争犯罪について訴追,処罰されたもの。

元の意味は、そもそもある原理に照らして戦争を正義と不正義に分けて、正しくない戦争の仕方(宣戦布告なしに攻撃をしかける、虐殺など)をおこなったということを意味する。そして、究極的にはその戦争は起こらない方が良かった、にもかかわらずそれを起こして、甚大な被害をもたらしてしまった者たちに対する責任追求を意味している

それに対して、ゲームでの使われ方では、戦争や争いが起きることは前提であり、世界のありのままの姿であり、そこに疑うべきところは何ひとつない。そして、勝利が正しいことであり、負けることが間違ったことである。負けの原因を作った者が犯罪者として扱われる。すなわち、勝ち負けが究極の原理であり、負けることが罪なのだ。ここでは、そもそも勝ち負けのない世界が存在しうるという可能性が欠落している。

もし元の意味をゲームに適用するなら、「戦犯」とはそもそもルールに違反したり、試合そのものの意義を破壊したり、さらにはそもそもするべきでない試合(場外乱闘など)をおこなったりする者のことを指すべきである。

もちろん、これはゲームの中のことでしかなく、そのように拡大解釈して、大げさに警戒しなくてもいいのではないか、と言われるかもしれない。しかし逆に言えば、このような言葉の使い方が危険でないのは、それがゲームの中に止まっている限りでしかないということでもある。

実際、人生には負け組や勝ち組が存在しているといった世界観がはびこっている。その世界観では、価値のある人間、すなわち勝利に貢献できるという意味で、社会にとって役にたつ人間がいる一方で、価値のない人間、社会にとってまったく無用で役に立たず、むしろ足を引っ張っている人間たちがいる。前者は社会的に成功しているといわないまでも、ちゃんと働いて、税金を納めている者たちが標準のイメージだろうし、後者はホームレス、生活保護受給者、外国人労働者などだろう。

しかしながら、これは一つの世界観でしかなく、あくまで「そういうことにしている」という社会でしかなく、根本的には人為的に設定された「現実ゲーム」である。そして、重要なのは、この「現実ゲーム」は決してフェアなゲームではなく、勝ち組は常に勝ち組になり、負け組は常になるような、アンフェアなゲームだということである。

このようなアンフェアなゲームの中でほかの者を抑圧し、断罪し、排除する者、さらにそもそもこんなしょうもない現実ゲームを設定するべきではなかったのに設定してしまった者たちこそ「戦犯」という言葉にふさわしいなら、これを変えずに維持し、支持さえする者もまた「戦犯」になるのではないかと思う。

「現実はクソゲーだ」という言葉を思い出す。この言葉が使われるのは大抵「思い通りにいかない」という意味においてである。逆に、すべてが思い通りになっている人たちにとって現実はクソゲーではないということになるのか。

しかし、あくまでゲームという比喩にこだわるならば、すべてが思い通りになるということはゲームバランスが崩れていることであり、つまりクソゲーの条件であり、勝ち組にとっても現実はクソゲーになるはずなのだ。そのようなゲームはいずれ続かなくなり、崩壊する。

もちろん両者にとってのクソゲーの意味が違うだろうが、それでもクソゲーはクソゲーであり、楽しめないものだという点は共通している。

そう考えると、フェアであること、平等であること、持続可能であること、さらにゲームのバランスとルールを自分たちできちんと調整できるという意味で自由であることは、単なる綺麗事や理念ではなく、物事がうまくいくようにするためのきわめて「現実的」な方法だという気がしてならない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?