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第十五章 貧乏人は二度死ぬ

仮装した男たち。
耳障りな猫撫で声を発しながらシャンペンを飲むホステス
トイレットペーパーのように金を使う成金
困惑した表情の貧困大学生

大阪カースト制度模範解答がそこにありました。

私は震えた手つきでグラスを口に運び、宴の行く末を見守っていました。

金ピカに光るミラーボールがステージ上を卑猥にチカチカと照らします。
もくもくと焚かれたスモークからバニーガールの男たちが登場。
一斉に湧き上がる店内。
(※偏差値が低ければ低いほど盛り上がると言われているので、この時の店内平均偏差値は15未満)

ここからはショーの説明。

Jさん
一斗缶に小麦粉を入れ、爆竹を投げ入れ、そこに顔を突っ込みます。
破裂音の後、顔面真っ白のJさんが口から小麦粉を吐き出しターンエンド。
私がせっせと掃除。

Hさん
顔に特大サイズのプリンを乗せ、手を使わず食べる。
基本的に失敗し、私がせっせと拭き取る

Nさん
Tバック姿に変身。
肛門に先端がミサイルのように飛ぶロケット花火を装着。
点火後、甲高い音と共に火花を噴射。
すぐ抜き取りターンエンド。
私がせっせと掃除。

全員
最後によくわからないダンスを行う。
合間に合いの手を入れて、シャンパン一気飲みスタート。

これが一連の流れです。
店内は最高潮の盛り上がりを見せました。

キャバ嬢からキャバ嬢へとシャンパンが入ったピッチャーが回されています。
(※現在では濃厚接触となりますが、平成後期の出来事なのでセーフ)

1番最後に回ってきたのは、収入も年齢も最下位の私。
飲み干そうとピッチャーを口につけた途端、何者かがピッチャーを真上にあげました。
もちろん、中身は私の体全身に降りかかります。

ずぶ濡れの私は犯人のものと思われる手を見ました。
透き通った肌、派手すぎないネイル。
Rさんだ!
私はとびっきりの純情なので、その手の持ち主の顔を見ました。
(※実際は月1度の風俗通いに全身全霊をかけた悪魔のような変態)

Rさんではなく、SNSで空とか海とか投稿してポエム書きそうなギャルでした。

Rさんはタクシーで帰宅したようで、その場にはいませんでした。

もう取っ替え引っ替え新しいキャバ嬢、ホステスがやってくるので、私はこの出来事を"水商売自動攪拌システム"と呼んでいます。

一気飲み終了後、有名人の弟は泥酔し店外にフラフラと出て行きました。
嫌な予感がしたので、その後をついて行きました。

マニュアル通りの嘔吐
晩ご飯は海鮮料理だったと理解するのに時間はかかりませんでした。
謝る弟は社長にお願いしてタクシーで帰りました。

モップ片手にお見送り。
「ありがとうございました!!」と心の底から礼を言いました。
(※実際は「2度と来んなこのボンクラ」と心で叫んでいます)

時給1000円でせっせと働き、労働時間500時間分の酒が1時間ほどで空になり、プリンと小麦粉とロケット花火を掃除して、ゲロをモップで拭き取る。

お金とは。
働くとは。
モップで私の心の汚れも拭き取りたいです。

吐瀉物の清掃後、裏路地に隠れハイライトに火をつけました。
(※ハイライトとは、この世で最も高貴なタバコ労働者に大人気)

ハイライトのタールが前世から背負っている宿命を表現するかのように重たく肺にのしかかってきました。

(※私の前世はドブネズミ泥棒と言われています)

続…

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