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【ゼミ生お薦め本】『絶望の国の幸福な若者たち』

著者プロフィール

古市憲寿(ふるいち のりとし)
1985年生まれ。東京都出身の社会学者。慶応義塾大学SFC研究所上席所員。

本の目次と概要

第1章 若者の誕生と終焉
 戦前や戦時中、高度経済成長期周辺や現代の若者論についてかなりたくさん紹介している。若者論の類は「私が若いころは頑張っていたのに今の若者はけしからん」とするタイプ、「若者は味方である」とするタイプ、「若者がよくわからない」とするタイプなど、同じようなことを言い続けている分野であることを著者は強調している。

第2章 ムラムラする若者たち
 本著で一番の見どころ。なぜ若者は幸福であると考えるのかについて述べられている。まず若者に対するマイナスなイメージについてデータに基づいて批判している。そして、若者が生活に満足していることへの考察として、「この先に今より幸福である未来が望めないため、いまはまだ幸せ」と考えているのではないかと主張する。この大きな主張とこれに対する批判や観想の数々は非常に興味深い。
ムラムラする若者というのは、仲間を大切にし、内向きな「村々する若者」と、やりたいことができていない、社会に貢献したいけどできていないといった“もどかしさ”からきている「ムラムラする若者」をかけたものになっている。

第3章 崩壊する「日本」?
 ワールドカップやオリンピックでだけ日本を意識する現代はナショナリズムが欠如しているということと、それに対しての著者の考えが述べられている。

第4章 「日本」のために立ち上がる若者たち
 社会に貢献したいと思う「ムラムラする若者」たちのデモや社会運動について。

第5章 東日本大震災と想定内の若者たち

第6章 絶望の国の幸福な若者たち
 若者が担っていく負担の話、意外と老人も大変であるという話、今の若者が中国の「農民工」のようなものになっているなどと多くの指摘がなされている。

お薦めの理由

 現代の日本では格差社会、財政赤字、少子高齢化の加速や年金問題など、先が思いやられる問題が山積みである。それらをこれから背負っていく若者たちは、さぞかわいそうであるというのが一般の認識だろう。しかし、著者は「現代の若者は幸福である」と主張する。
 このような主張を裏付けるためになされる歴代の若者論の紹介と著者による皮肉的な批判など、著者のオリジナリティに溢れた主張は鋭い。
多くのデータの参照とシニカルな言い回しによって展開される本書は、我々に多くの気付きを与える。
(K. O)

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