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【ゼミ生お薦め本】『誰が国語力を殺すのか』

著者 石井光太

概要
 現在、若者たちの中で国語力が著しく低下している。それは注意報ではなく警報レベルまで達している。なにが原因となっているのか、そしてそこから引き起こされる問題を取り上げ、最後には状況を打破できるような効果的な事例が紹介されている。

目次
序章
第一章 誰が殺されているのか―格差と国語力
第二章 学校が殺したのか―教育崩壊
第三章 ネットが悪いのか―SNS言語の侵略
第四章 一九万人の不登校児を救え―フリースクールでの再生
第五章 ゲーム世界からの子供を奪還する―ネット依存からの脱却
第六章 非行少年の心に色彩を与える―少年院の言語回復プログラム
第七章 小学校はいかに子供を救うのか―国語力育成の最前線1
第八章 中学校はいかに子供を救うのか―国語力育成の最前線2
終章

おすすめの理由
 なにより、この本を読むことによって若者たちの国語力の低下の深刻さを痛感することができます。実際、私たちが思っている何倍もの残酷な状況が起こっていることに驚かされました。
 例えば、この本の中では『ごんぎつね』という童話を用いて一部が説明がされています。この物語の中では村人たちが鍋をぐつぐつ煮るという場面があります。物語の流れをみれば、これは主人公の母親の葬儀のため、みんなに振舞う食事を作っている場面だと、誰もが説明なしに当たり前に解釈できるはずなのですが、子供たちの中には、「母親の死体を煮ているのだ」「消毒の最中だ」などと、普通では信じられないようなことを真剣に平然に答える子もいるのです。ほかにもSNS上でのやりとりのなかでの誤解や、それまでの話の流れや文脈を無視し、単語だけを取り出して考えてしまうケースなど、想像を超えた現実が記されています。「殺された国語力」。これが虚構ではなく、今起こっている現実なのです。
 このような状況下でいまどういった教育や取り組みが必要か、また、自分たちが親になったときに、子供たちに対して果たしてどのような教育をしていくべきか、考えるヒントをたくさんいただいた本です。新技術や新発想など、さまざまなものが同時進行的に展開し、私たちを取り巻く環境が複雑になりつつあるなか、この本は今一度国語力の重要性を感じさせ、さらには思考を広げてくれるような一冊になっています。(N. W)


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