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最近観た劇場公開・配信映画(2022年1月)

 1月に観た劇場公開・配信映画のレビューです。通常はある程度、自分が好きそうな映画に見当をつけて観てるので、オススメ映画的な感じになるのだけど、今回は当たり外れがあったなあ…

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(劇場公開)

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 フランスの架空の街にある編集部を舞台にした3編の物語からなる映画。

 今作もウェス・アンダーソン監督らしく画面の細部までにこだわりが詰まっていて、情報量がハンパない。自分はどちらかといえば雑然としたものの方が好きなので、完璧なまでにコントロールされて整然とした絵作りは、好みではなかったりはするが、ここまで密度が濃い映画を観る体験は他に代替が無く、楽しい映画体験である。どう考えても映画やカルチャーに対する異常な情熱を感じて、グッと来る。

 加えて、チョイ役含め贅沢に使われる豪華キャスト(豪華なだけではなくイイ役者ばかり)のお祭り感が凄い。個人的にはクリストフ・ヴァルツがチラッと出てたのが嬉しかった。あと、女性に振り回されるシャラメ(そういう役回り多い)の困り顔はなんかずっと観てられるな(何目線かわからないけど)。

 ちなみにウェス作品では『ダージリン急行』がユルくて好きです。

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Coda コーダ あいのうた(劇場公開)

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 聾唖の家族の中で唯一の健聴者の娘(そのような子供のことをCODA=Child of Deaf Adults と呼ぶ)が、歌の才能を見出され、夢の実現と家族との間で葛藤する物語。

 気持ちを伝えることの難しさに対して、伝えようと必死に努力する人達の姿が胸を打ち、その度に泣いた。一見、真逆に存在するような「手話」と「歌唱」の繋げ方が見事。

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 父、母、兄が、健聴者の主人公の立場を強調する役割のためだけに存在するのではなく、それぞれの性格や抱える葛藤が丁寧に描かれているところが良かった(基本的にみんな明るいのも)。特に兄と妹のシーンは胸が締め付けられた。皆、実際に聾唖の俳優だからこそ出せる説得力。

 昨年の『サウンド・オブ・メタル』『エターナルズ』『ドライブ・マイ・カー』に続き、コミュニケーション手段としての手話への興味がまた高まった。

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スティルウォーター(劇場公開)

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 留学先のマルセイユにて殺人罪で逮捕された娘の無罪を晴らすため、独り渡仏する父親の物語。

 サスペンスとして引き込まれるだけでなく、マット・デイモン演じる現在のアメリカを体現したような父親(ベースボールキャップにOakly的なサングラスの組み合わせが堪らない)が、異国で異なる価値観と衝突し、躓き、時に癒される様子がとても切ない。英語が通じない事による、コミュニケーションの断絶が映画全体にスパイスとして効いている。エンディングの割り切れない後味が観終わった後も残り続ける。

 地味な作品なんだけど、何だか良い映画に出会ったなあという感じ。

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ハウス・オブ・グッチ(劇場公開)

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 実際に起きた事件をベースにグッチ一族内の争いを描いた映像。

 豪華俳優陣が演じる曲者達によるパワーゲームが楽し過ぎて贅沢な時間だった。先天的だろうと後天的だろうと、手に入れたモノに対する異常なまでの人間の執着心や欲望は滑稽でもあるけど、そんな人間の姿に愛おしさや生命力を感じるから不思議。 

 レディ・ガガの愛嬌がありつつ、意志の強さ(欲深さ?)を感じる顔がハマり役だった。逆にジャレッド・レトは特殊メイクで原型留めてないけど最高に愛しいキャラクター。特に80年代的な蛍光色のジャージの着こなしが最高。

 にしても、リドリー・スコット、84歳にして未だに撮る作品が毎作面白いのが凄い。

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クライ・マッチョ(劇場公開)

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 こちらは御歳91歳(!)のクリント・イーストウッド監督・主演作。老いぼれた元カウボーイがメキシコへ友人の息子を連れ戻しに行くロードムービー。

 派手なドラマは無いが「男らしさ」と「老い」というイーストウッドだからこそ説得力が増すテーマの深み、もはやイースト・ウッド映画史自体が物語のよう。そして91歳にして尚、前向きなメッセージに勇気をもらえる。もはや、映画業界的な空気を読むことなく撮りたい作品を撮ってる感じのイーストウッド、カッコ良過ぎる。次回作も待ってます。

 『エターナルズ』の撮影監督、ベン・デイヴィスによるメキシコの砂漠の風景も美しかった。

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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(劇場公開)

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 トム・ホランド主演による『スパイダーマン』シリーズ3部作の3作品目。ネタバレ厳禁なのであまりコメントできないが。基本的にはニッコリ親指立てたい感じに最高な映画体験だった(ある場面で泣いた)…ただ、過去の『スパイダーマン』(サムライミ監督版、アメイジングシリーズ)をぼんやりとしか観てなかったため、TLやレビューサイトの大絶賛ほどの温度感ではないのも正直なところ(PS4のゲームで得た知識で多少補えた)。

 過去シリーズ含めたメタ的な楽しみ方な部分以外にも、ミラー・ディメンション表現、ピーターとMJカップルのフレッシュな関係性、そして、とあるヒップホップクラシックを使ったエンディング曲(字幕版)には込められたメッセージも含めて超アガった。

 笑ったり、驚きのリアクションしたり、最後に拍手したり(俺はしないが笑)、映画館で観る喜び感じた。グランドシネマサンシャインで観たけど、劇場内で感想話しながら帰らないよう促す看板が出てた。大事。劇場がかなり混んでたため、飲み物とポップコーンが買えず…もうちょっと早めに行くべきだった。

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キングスマン:ファースト・エージェント(劇場公開)

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 前1、2作で好きだったアクション場面の突き抜けた「バカさとグロさ、でも超絶スタイリッシュ」という特徴は失われ、ほぼ別の映画に。といって今回のシリアス展開にも突っ込み所が多く、説明も長いので睡魔が…ただロシアの怪僧ラスプーチンはとても不気味で、もっと調べたくなった。子供の頃、ゲーセンで遊んだカプコンの格ゲーに登場していた思い出。

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明け方の若者たち(劇場公開)

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 何者かになりたいと願う20代の主人公が恋愛と仕事に苦悩する物語。自分も過去のトラウマ恋愛的な小説をnoteに書いていたこともあり、参考になるかと思い原作を読んでいた。原作はさらっとした小説であまり記憶には残っていなかったものの、どのように映画化されているか興味があり鑑賞。

 ※ここから先に偉そうに辛辣な文章を書いてるので、本作が好きな方すいません。映画を通じて、自分のモラトリアム期を思い出して悶絶する気持ちはわかります…

 結論としては、物語の前に、演出、構成、細部の衣装などに至るまで、映画としての粗が気になり過ぎて、映画に没入するどころではなかった。記号的に登場するカルチャーの扱い方も対象への愛情というか興味?を感じられずにイライラ…

 逆にこの映画のことが気になってしまいAmazon Primeで配信されているスピンオフ『ある夜、彼女は明け方を想う』も観た。こちらにのみ出演している若葉竜也に微かな期待も込めたが、こちらも本編以上に作品としてのおかしいと思うことばかりで、最終的に「映画」とは「人間を描くとは?」というところまで想いを馳せるに至った。その意味では十分に楽しませてもらったし、これも映画を観る楽しみだと思う。他の人の感想が聞きたくて会う人、会う人に観るように勧めている。

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感想まとめ

 最近シリーズモノが多くて少し食傷気味だったのか、地味な単独作を求める自分がいて、『スティルウォーター』や『クライ・マッチョ』はそんな気分にフィットした。

 また、自分としてダメだと思う映画ほどその映画について考えてしまい、何故自分がダメだと思うのかをじっくり考えるのは良い体験。改めて普段観てる映画の出来の素晴らしさ再認識。


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