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入門現代の電磁気学

200年にわたり親しまれてきたマクスウエルの方程式が、さらなる高みからの記述に変わろうとしている。マクスウエルの方程式を特殊相対性理論の観点から作用素を含む美しい2本の式(時間と3次元座標の4要素のベクトル式)で表現する試みである。本書はそのゴールに向けて1章と2章を特殊相対性理論の数式導出に当て、3章以下の流れが最後に特殊相対性理論の式と融合する。未来の電磁気学は量子力学にも通底するこちらの記述に移っていくだろうと予感させる一冊。
#わたしの本棚 #入門現代の電磁気学


はじめに

最近、マクスウェル方程式を以下の1本の式で表しているのを時々見かける

マクスウエル方程式の4次元表記

http://tamago.mtk.nao.ac.jp/chen/relativity/ejiri.pdf

以前から、ニュートン力学の式が、相対性理論の式の速度を光速よりはるかに遅いとして導出できるように、上位の概念は下位の概念を含んでいるはずなのに F=ma を E=Mc2 からどうやって導き出すのかなど、一見個々の式がバラバラに見える 相対性理論、電磁気学、量子力学、波動方程式の関連が明確に記述されている書籍が見当たらないのが気になっていた私にとって大変有り難い一冊となった。

第1章 特殊相対性理論

ローレンツ変換を基礎に、4元速度と4元運動量まで。

第2章 相対論的運動学

自然単位の導入と4元運動量保存則

第3章 電場

クーロンの法則とガウスの法則

第4章 磁場

ローレンツ力とベクトルポテンシャル

第5章 電磁誘導とマクスウエルの方程式

マクスウエル方程式の導出

第6章 準静的過程と交流回路

電磁場の伝播時間が振動周期時間に比して無視できる場合をマクスウエル方程式(高所)から導く

第7章 電磁場内の荷電粒子の運動

静磁場、静電場、電磁場中の荷電粒子の運動

第8章 真空中の電磁波と電磁気学の相対論的形式

本書の核心部分。4元ポテンシャルを用いてマクスウエル方程式を記述する

おわりに

第8章の「4元ポテンシャルを用いてマクスウエル方程式を記述する」部分に向けてすべての記述が収束していくのだが、途中の章は電磁気学の基礎をわかりやすく述べていて、数学が得意な方は従来の電磁気学より本書のほうがとっつきやすいのではないだろうか

電磁気学が単独の単位として存在する時代は終わり、電磁気学の授業は相対性理論とセットの一貫した授業内容で行われるようになる予感がしている。


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