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本を選んでもらう贅沢 - COFFEE TO BOOKS TO ART

シェアオフィスの一階のラウンジで開催されていた「COFFEE TO BOOKS TO ART at FARO神楽坂」に家族みんなで行ってきた。

なんとなく把握していたのは「本を選んでくれる」ことだけで、そのイメージは全く湧いていなかった。話を聞いてみると、その日の気分やら何となく読みたい本のイメージを伝えると、3、4冊の本を選んでその解説をしてくれて、その場でゆっくりとコーヒーを飲みながらその本を読むことができる。で、読んでみてその本が気に入れば購入することもできる。そういうことらしい。

用意された本はいわゆる「古本」で、著者の名前はちらほらと聞いたことのある人の本もあるが、装丁は見たこともない古いものばかり。特徴的なのは価格が記載されていないことで、価格が書いてあると価格に気が取られてしまい、本を選び楽しむ妨げになるからだとか。ただ、大体の価格幅は決まっていて、概ね千円から二千円に収まるとのこと。

そこまで説明を受けたところで、自分はなんかしっかりした文章を読めるエッセイなり随筆をリクエスト。ネットを通じてあらゆる人の文章を雑多に読んでいる中で、なにか洗練されたもの、それも自分ではない誰かが選んだものを読みたい欲求が最近あったからだ。

それで選んでくれたのがこの4冊。どれも装丁が特徴的で手に取るだけでも楽しい。

随筆やエッセイをリクエストしたからか、著者についての解説をしてくれた。これが小説やノンフィクションだと本の登場人物や装丁をした人の話を、初版本に価値があるようなタイプの本だと、復刊本だから手頃な価格で買えるものだとか、本自体の話をしてくれたりもする。ソムリエにワインの話を聞いているときの感覚に近いだろうか。

結局、自分は一冊、獅子文六著の「愚者の楽園」って本を買うことにした。

この人の本業は演出家なのだが、日銭を稼ぐために新聞に寄稿したユーモア小説が当たり、小説家としても名を馳せた人らしい。この随筆自体も新聞に連載していたもの。

自分がこの本を選んだのは、限られた時間の中で、この本の随筆のみ一編を読み切れて、その空気を感じられたことも大きいが、昭和41年に出版されたこの本が、自分の生まれる10年前の日本の生活を感じさせ、いま自分が現代の日本で感じていることと似通ったことも書かれているのが面白かった。似たような時期に出版された「紙魚の退屈」にも惹かれたのだか、装丁の好みと、何より自分が読みたいと感じる強さが勝った方を選んだってところか。

もちろん、一冊である必要もなかったのだが、電子書籍ばかりでしばらく紙の本を読んでいない自分がいきなり何冊も紙の本を読み切れる自信もちょっとなかったので、今回は一冊に抑えることにした。

・・・

しかし、人に自分のために本を選んでもらい、その解説を聞くことが、これほど新鮮で、これほど面白いものだとは思わなかった。心地よいとも言える。まあ当然か、自分のために専門家が選んでくれるのは贅沢なことだものな。

古本である以上はその日に出会った本にもう一度出会えることは少ないのかもしれない。そう考えると、本を選んでもらった後にその本を読む時間がもう少し欲しかったか。

落ち着いて話ができ、本をゆっくりと読める場所と適度な混み具合。このイベントのためにあるかのようなスペースにも見えてしまうこのFARO神楽坂のラウンジ。そして「WHY NOT Specialty Coffee&」のコーヒーに隣接するギャラリー。。。

次回があるなら来たくなるな。古本を楽しむってのはこういうことなのかってのも体験できるイベントなのかもしれない。

#日記 #本 #古本

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