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過剰な値引きは誰も得をしない

 仕事の話です。

 新規の客先から案件を頂いたのですが、これが酷い内容で。

 客先担当者曰く、予算が無く人件費は一週間分しか出せないので、それで受注して欲しい、との事。この案件はベテランでも最低二週間は掛かるとの事で、今まで取引の無い私が受けるならひと月は欲しい案件です。

 なのでお断りすると、取引実績さえ出来れば良いので、とにかく受注さえしてくれれば後は担当者が引き受けるから最悪仕事はしなくて良い、とまで言って食い下がってきます。

 仕事をせずに一週間分の人件費が貰えるなんて美味しい話じゃないかと思うかも知れませんが、世の中そんな甘くはありません。

 先ず、受注するためには見積を出さなくてはいけませんが、当然見積には一週間分の工数として金額が記入されます。それで受注してしまうと、私はこの案件を一週間分の工数で完遂する義務が生じます。そして「後は引き受ける」云々は全て担当者の口約束なのです。よって、受注した後で担当者がしらばっくれたり出張とかで居なくなってしまうと、その案件を私の責任で完遂しなければならなくなります。

 まるで詐欺のような話ですが、この手の依頼は昔からあり、後を絶ちません。特に取引実績の無い顧客の案件は要注意です。最初から使い捨て目的で発注している可能性が高いからです。

 上手く行っても赤字になるのは明白、失敗すると責任だけ押し付けられ、最悪損害賠償まで請求されます。受注する側にとってはデメリットしか無いのです。

 このような発注が後を絶たない理由のひとつに、顧客を開拓したい受注者側の思惑があります。受注を優先して最初から赤字覚悟の特値で受注する企業があるのです。受注する側にとっては一度取引実績を作れば次回以降の受注で回収できると考えるのでしょうが、一度特値で受注すると、以降その価格がボーダーとなってしまい受注単価が大幅に下げられてしまいます。受注側が断れば、発注側は新しい受注先を探すだけなので、結局受注側が損を被って終わりです。

 発注側も、こんな取引を続けていると業界内で評判が立つので、まともな企業はどこも相手にしなくなります。結果として能力の低い企業や個人事業主が集まるので仕事の質はどんどん低下し、価格を大幅に下げなければ顧客からも相手にされなくなってしまいます。そうして、ますます安い価格でしか発注できなくなるのです。

 結局、過剰な値引きは誰も得をしないのです。

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