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初めて食べたタイ料理のあじ

初めて食べたタイ料理は何だっただろう?

19歳の時にタイを女二人旅した大好きな友人と、約一年半ぶりに再会した。二人とも、その旅行がきっかけでアジアにどっぷり浸かることとなった。今はお互い日本にいてアジア不足のため、昼も夜もタイ料理をはしごすることになった。

どちらのお店も最高に美味しかったのだが、夜に行ったお店のマスターが、初めて食べたタイ料理の話をしてくれた。

「初めて食べたタイ料理はね、カオマンガイですよ。タイに着いて、そう、そのときは以前の空港でね。ドンムアン。そこから電車で最初に着いた駅が…フアランポーンだったかな。駅の前にまあるく屋台があってね、そこへ行ってぱっと指さしたのがカオマンガイでした。いや〜、本当に美味しかったですよ。」

「へ〜、初めてのタイ料理が屋台のカオマンガイだなんてセンスがありますねえ。」


そんな会話から、自分たちの記憶を辿る。


「うちらは、何だったかな?」

「あれよ、あれ。空港から電車出とるやん、その、着く駅。」

「エアポートリンクね。パーヤタイかな。」

「そう、そこで降りて、早朝めちゃくちゃ道に迷って。暑いし歩き疲れたしお腹すいたし、とりあえず何でもええけんって、めちゃくちゃ甘いパン食べた。」

「あー!めっちゃ黄色いパンやろ!しかも冷房効きすぎててめちゃくちゃ寒かった。」


タイの街角での何気ない記憶が鮮明に蘇る。初めての東南アジア、パーヤタイ駅を降りた時の、全身を、とくに顔面を襲った熱気。その熱に耐えられなくて、あぁ、帰りたい、帰れないけど、と思った。

冷やすことがおもてなしの東南アジアでは、室内が寒いのは当たり前。そんなことも知らず涼を求めて入ったお店で、寒さのせいで体調を崩しかける。甘ったるいパンの味はよく覚えていない。ただ、それに付随する思い出がまだわたしの中で生きていた。暑苦しくて愛おしい。久しぶりに触れた気がした。


マスターも、カオマンガイを指差したんです、と話したところでくすりと笑っていた。初めてのバックパッカーとやらの旅だったそうだ。何を食べたらいいのかわからなかったから、とりあえず目についたカオマンガイを指差したのだろうか。付随する思い出が、生き生きしている。


「初めて」には、思い出が付随する。初めて食べたもの、初めての宿、初めて買ったもの、初めて出会った人、初めて話した人、初めて捕まえたタクシー、初めて迷ったときのこと、初めて体調を壊したときのこと…。


旅の思い出話をするとき、「初めて」に付随する思い出を話してみるのはどうだろうか。旅行で楽しかったことは?その国のどこが好きなの?そういう質問をちょっとひと工夫。初めて泊まった宿について聞かせて!その宿をどうやって見つけたの?何か面白いものはあった?素敵な人はいた?…


そういえば、わたしがフィリピンで初めて食べたのは、空港のツナパイ。見事に、真ん中の位置でコバエがお亡くなりになっていた。食べきれる気がしないなぁと思いながら、留学先で同期となる男の子を待っていた。同じバスで学校に向かうためだ。どんな子なんだろ。というかそもそも、なんでその子を待たなきゃなんないの。他の子はみんな先に行ったのに、わたしだけ人数があぶれてしまって送迎のバスに乗れなくて、次の送迎バス待ち。最悪。眠いし、暇だし、きっと先にバスに乗れた女の子たち同士で友達になってしまっているだろうし。初日からいろいろ乗り遅れてる。……コバエの乗ったツナパイは、角をほんの一口だけ食べて残した。

初日からいきなり疎外感を感じながらも、結局、標準語を話す都会から来た男の子とは仲良くなった。あれから会っていないけれど元気にしてるのかな?いつも面白い顔をしている人だった。

みなさんが大好きな国で食べた、初めての食事は何でしたか?ぜひ聞かせて欲しいです。

#旅 #エッセイ #紀行文 #タイ #タイ料理


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