ぞなもしカレー日誌#13 思い出のインデアンカレー
インデアンカレーをご存知か?
存知ませんという人には激うまカレーだと教えてあげたいと思う。東京だと丸の内にある。
初めて行ったのは大阪の梅田にある店。お昼時にはそれなりの行列ができるほどの有名な店らしいのだが、全く知らなかった。その当時、梅田で働いていたので、先輩に連れて行かれた。
以前どこかに書いた気がするが、実家のカレーが不味かったせいで、カレーに対する評価は低かった。まあパイセンが言うから、ついて行くしかないか、という程度でその店に行った。その当時、薦められるカレー店に行っても、それほどうまいと思わなかったので、自分にはカレーは合わないのだ、とすら考えていた。で、食べてみた。激うまだった。食べたことのないカレーの味だった。甘い。その後に辛い。それがうまい。
そして店の雰囲気もいいのである。
店の中には、たぶん一番偉いと思われる人がカウンターの真ん中にデンと立っている。その人が何をしているかといえば、カレーにルーをかけるのだ。たまに卵をご飯の中央に置いたりする以外はルーをかけるだけである。しかし、その手さばきはプロフェッショナルである。眼光もプロフェッショナル。鋭い。カレー屋とは思えぬほどである。そのせいで、こちらも緊張感がある。更にカウンター席の後ろには順番待ちのサラリーマンが、ランチタイムの短い時間を削られながら無言の圧をこちらにかけてくる。店員のプロフェッショナルな連携プレーでキャベツのピクルスと芸術的なほど均一に盛られたカレーが目の前に出てくる。もはや喋りながら食うなよという雰囲気がある。だがそれも嫌な雰囲気ではない。ちょっと心地よいくらいである。そういった店の雰囲気も好きだった。空気読まずにダラダラ喋っていたOLもいたが。
以来、カレーに対する評価が上がり、カレーそのものをたまにたべるようになったし、自分で作るようにもなった。言ってみればカレー界の救世主と言っていい。救ったのが私程度なので、それはどうなの? とは思うが。
時を経て、私は東京にいて、おっさんとなっている。あのインデアンカレーは東京には丸の内にしかない。いや、なかった。最近、新しい店を出店したらしい。私もたまに丸の内に行った時に、インデアンカレーに入ったり入らなかったりもしていた。
で、今回、けっこう久しぶりに食べた。店の雰囲気は、休日というものあるのか、梅田の雰囲気には遠く及ばないまったり感。コロナのせいかレジを担当する店員さんもいなくなっており、カウンターで注文、精算するシステムになっていた。
私はカレーと卵を注文する。真ん中にデンと立つ偉いっぽい人がご飯を盛り、上に窪みを作って、カレーをかける。あれ? ここの人ご飯盛ったっけな? と思いながら、目の前に出てきたカレーを食べる。相変わらず甘いし旨い。ただ、最近は辛さのインフレが進みすぎたせいか、そこまで辛いとは思わなかった。ただただ旨かった。そして新たに発見したのが、米がめっちゃ旨いことである。程よい硬さでカレーとよく合う。照りや甘みから推測すると、酒と油を足して炊いてる気がする。
変わらない美味しさ。変わった自分の味覚と、新しい発見。なかなか豊かな食体験ではないかと思いながら、店を出た。またいつか来ると思う。
実はインデアンカレーにはカレーライス以外にカレースパゲティとハヤシライスがある。とても気になっているのだが、カレーライスが旨すぎて、そちらを選択する機会に恵まれない。カレーライス以外、選択する気になれないのである。食べることはない。かもしれないし、あるかもしれない。ぞなもし。
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